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蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

来訪神  (bon)

2022-03-19 | 日々雑感、散策、旅行

 突然ですが、『来訪神』というのは、年に一度 決まった時期に人間の世界に来訪
するとされる神である(ウイキペディア) とあります。秋田県男鹿の「ナマハゲ」
などがよく知られていますが、多くの場合、仮面などで仮装した異形の姿をして現
れて豊饒や幸福をもたらす民俗的な行事で地域の住人等が神に扮して行われます。

 この『来訪神』は全国的に行われていますが、その中で奥能登、輪島近くの皆月
(みなづき)、五十州(いぎす)という村の行事が、手元の会報記事『民俗を尋ね
て』のコーナーに能登の「アマメハギ」を中心として述べられていました。(川村
清志氏、国立歴史民俗博物館准教授)

  能登の皆月といえば、もう30年以上も前に、北陸に勤務していた折の夏の休暇に
突然訪れて民宿に1泊した時のことが想い出されてきましたのでそれらも含めて記事
アップしてみました。

        アマメハギ(例)
        (能都町観光ガイドより)

 まず、来訪神については、2018年10月にユネスコ無形文化遺産に『来訪神:仮面・
仮装の神々』として、日本の来訪神行事10件が登録されました。これら10件の行事
はいずれも重要無形民俗文化財に指定されています。

 ユネスコに登録された来訪神10件
 ・甑島(こしきじま)のトシドン(鹿児島県薩摩川内市) 大晦日
 ・男鹿(おが)のナマハゲ(秋田県男鹿市) 大晦日
 ・能登(のと)のアマメハギ(石川県輪島市・能登町) 正月、小正月
 ・宮古島(みやこじま)のパーントゥ(沖縄県宮古島市) 10月
 ・遊佐(ゆざ)の小正月行事(山形県遊佐町) 小正月
 ・米川(よねかわ)の水かぶり(宮城県登米市) 2月初午
 ・見島(みしま)のカセドリ(佐賀県佐賀市) 2月第2土曜日
 ・吉浜(よしはま)のスネカ(岩手県大船渡市) 1月15日
 ・薩摩硫黄島(さつまいおうじま)のメンドン(鹿児島県三島村) 旧暦8月1日
 ・悪石島(あくせきじま)のボゼ(鹿児島県十島村) 旧暦7月16日の盆踊りの
  終盤

 この中にあります「能登のアマメハギ」について、石川県輪島市の外浦、日本海
に面した皆月と五十州という小さな集落での変遷などが取り上げて紹介されていま
した。 この地域のアマメハギは、明治以前からあったようだとありますが、少な
くとも昭和の初めころまではしっかり行われていたようです。

 「アマメ」というのは、長時間囲炉裏にあたった時にできる火だこのことで、怠
け者の象徴とされ、それをはぎ取る から「アマメハギ」と呼ばれるそうです。 
年明けの寒い冬の夜、子供がいる家に入るとき、アマメハギは面をつけてオーオー
と荒々しい声を上げて戸を開け、神棚のお祓い、家主、家族のお祓いをした後、子
供たちに襲い掛かる仕草をして「怠け者はいないか!」などと脅すのです。

 このような行事も過疎化の影響で地元の壮年会ではアマメハギのメンバーを集め
るのに苦労し、10年ほど前には休止とされていたそうですが、それが各々の親族に
帰省を促して再開して2年になるそうです。都会に住む青年層が帰省して親たちも
担当して12軒を回り、一方数軒の家には子供たちを連れて実家に戻って来たところ
もあり、子供たちにとっては見たこともない怖いお面の乱入に泣きさけぶ子もいれば、
幼少期からこの風習に馴染んでいないためキョトンとしてほとんど反応しない子も
いたりして脅かす方もやりにくく勝手が違うなどの意見もあったそうです。

 会報記事には、このような側面も踏まえて、『来訪神は無形文化遺産という新た
な規格によって価値づけされることとなったが、反面、共同体の危機的な状況は悪化
し続けている。』さらに、『今回の登録は、子供たちへの教育的な側面が強調され、
文化的な位置づけは固定化されているようにみえる』とし、改めて民俗文化の継承
についての意味が問われていました。

 ところで、私がかなり前に皆月に1泊した想い出とは何かといえば、突然宿泊を
することになった民宿の主が、この時の町長選挙に立候補されている方で、その人
との酒飲み話の内容を想い出したのでした。
 皆月という村は、能登半島の輪島市にあり総持寺に近く、門前町(2006年に輪島市
に合併)の海に面した小さな村で、この町をどう発展させて行くか町長選挙を控えた
話題に終始したのでした。

       皆月と五十州
         

 
            総持寺
             (ウイキペディアより)

 いつ頃だったか定かではないのですが、町長選挙が1987年にあったということから、
おそらくその年の夏のことだったのでしょう。突然、宿泊をお願いしたために部屋
がなく、泊まる部屋はその時宴会の最中であった広間で、それが終わって片づけら
れるまで、ご主人と話し込んでいたのでした。ご主人が言うには「この町の世帯数
は800世帯足らずで、その内、生殖能力のあるのは何世帯あるが、実際に子供を産む
可能性のあるのは、何世帯で 後は子供を産まない。結婚適齢の娘は、何人しか
いない・・」そんな切実な話が、このアマメハギの現状に絡んで生々しく想い出さ
れてきたのでした。 

 

 

 

怠け癖を来訪神が戒める・輪島市門前町皆月の「あまめはぎ」【4K】

 

 

 

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