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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ウナギ 地球環境を語る魚

2007-10-10 07:33:36 | ノンフィクション
 日本で現在食べられているウナギの大半がヨーロッパウナギのシラスを中国・台湾の養殖池で太らせて日本に輸入しているものであり、そのヨーロッパウナギが2007年、ついにワシントン条約の規制対象になったこと、ウナギの生態の研究や漁業規制が不十分な実情などをレポートした本。
 日本でも天然ウナギはほとんど捕れなくなりその背景には河口堰やダム、河川・湖沼の護岸の影響が大きいと思われること、しかし、日本ではヨーロッパと異なりそういったことについての研究やダム等でのウナギ遡上のための魚道の設置、水力発電所のタービンでの降りウナギ(産卵のために川を下るウナギ)の致死率を下げるための取り組みなどがほとんど行われていないこと(168~169頁等)の指摘には驚きました。
 ウナギの生態の多くの部分はいまだに謎で、産卵場所がようやく最近になってヨーロッパウナギとアメリカウナギはサルガッソー海、日本ウナギはグァム島付近の海山の近辺と特定されたものの、河川を下ってから産卵場所までの親ウナギの動向や産卵直前の様子、孵化直後のウナギの生態などは海域で見た人もおらず謎のままとされています。それでもそういう領域や養殖の研究では日本の研究は進んでいるけど、天然ウナギの保護等については研究が遅れているという指摘は、いかにも産業化のための研究にだけは研究資金が出るという日本の実情を感じます。
 絶滅が危惧されるほど世界のウナギのシラスやシラスを中国等で養殖したウナギをかき集める世界最大のウナギ消費国日本が、天然ウナギの保護はお粗末、漁獲量が減少した最近消費量が急激に増えている(中国での養殖で安くなったため)ということには、考えさせられます。


井田徹治 岩波新書 2007年8月21日発行
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