企業の社会的責任の一環として公正な労働条件(主として労働者の団結権、奴隷的労働・児童労働の禁止)を守っていることを要求し、それを取引・商品購入の前提とし、そのために民間の認証機関の認証を求める動きについて論じた本。
著者はこの動きに対して、民間認証機関がアメリカの団体でありアメリカ政府が支援していることから、途上国に対してのみ厳しくなる基本的人権に名を借りた保護主義のツールではないかと警戒するよう指摘しています。労働条件に関する規制については、アメリカもホワイトカラーイグザンプション(残業時間無制限)とか社会保険とかかなりひどいと思いますが、企業に要求する基準はILO条約の基本権部分に限定して「先進国」は困らないようにしているそうです。そういう面、著者の主張にも頷ける点があります。
しかし、途上国での多国籍企業や昨今の日本のように使用者側がやりたい放題で政府の規制が効いていないとき、欧米の企業の経済戦略によってでも、労働者の労働条件を改善できるのであれば、それほど敵視する必要もないのではないかとも思います。
著者が元ILO職員であるためでしょうけど、ILOの条約が、妥協の産物である部分も含めて最善で、ILO条約の実質的な内容や解釈はILOしかできないという姿勢には疑問を感じますし、ILOの組織防衛を優先している感じがします。ましてやアジアの(人権の)独自性を言い、アメリカの企業にイニシァティブを取られる前に日本版の民間認証機関を作り(そこには自分のような学者を参加させ)アジアの企業を防衛しようというような提言に至っては、労働者の権利の擁護水準の低さを守り経営側の利益を守ろうと言っているようでとても嫌な感じがします。
吾郷眞一 講談社現代新書 2007年8月20日発行
著者はこの動きに対して、民間認証機関がアメリカの団体でありアメリカ政府が支援していることから、途上国に対してのみ厳しくなる基本的人権に名を借りた保護主義のツールではないかと警戒するよう指摘しています。労働条件に関する規制については、アメリカもホワイトカラーイグザンプション(残業時間無制限)とか社会保険とかかなりひどいと思いますが、企業に要求する基準はILO条約の基本権部分に限定して「先進国」は困らないようにしているそうです。そういう面、著者の主張にも頷ける点があります。
しかし、途上国での多国籍企業や昨今の日本のように使用者側がやりたい放題で政府の規制が効いていないとき、欧米の企業の経済戦略によってでも、労働者の労働条件を改善できるのであれば、それほど敵視する必要もないのではないかとも思います。
著者が元ILO職員であるためでしょうけど、ILOの条約が、妥協の産物である部分も含めて最善で、ILO条約の実質的な内容や解釈はILOしかできないという姿勢には疑問を感じますし、ILOの組織防衛を優先している感じがします。ましてやアジアの(人権の)独自性を言い、アメリカの企業にイニシァティブを取られる前に日本版の民間認証機関を作り(そこには自分のような学者を参加させ)アジアの企業を防衛しようというような提言に至っては、労働者の権利の擁護水準の低さを守り経営側の利益を守ろうと言っているようでとても嫌な感じがします。
吾郷眞一 講談社現代新書 2007年8月20日発行