伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

もしも、この世に天使が。《白の章》

2009-06-30 22:38:46 | 小説
 6月10日の記事で紹介した「もしも、この世に天使が。《青の章》」の続編にして完結編。
 第1巻の《青の章》でさんざんもったいぶり、危なげな要素を振りまいた挙げ句、第2巻の《白の章》では登場人物が全員いい人・いい子になりきって純情青春ラブストーリーになってお終い。第1巻では主人公の亜央は中2にしてラブホに入り、恋人の真も気が多くてもっとワルふうだったのに。第2巻がこうなるなら、最初から純情路線の方がスッキリすると思います。私は、それならその方が素直に入れたのに。第1巻で毒がありそうに書くからそういう展開を期待した分、第2巻を読んで拍子抜けです。
 まぁ、第1巻の終わりが、いかにも昔の安いメロドラマふうのピンチを作って「続く」だったので作品としてあまり期待してませんでしたし、そういう作品にありがちなようにそのピンチは第2巻になるとサラッと過ぎ去りますし。
 それにしても、作者の公式サイトでも「色をテーマにした章立てで進んでいく予定です。何冊まで、書けるかな~。」とか書いてたのに、第2巻で完結って、何でしょう(それとも、最後に「了」って書いてあっても完結してないとか?第2巻までには別の色の付いた名前の登場人物はいませんから、第3巻を書くとしたら新たに赤とか黄色とかいう登場人物を唐突に出してくるのでしょうか)。そういうことを見ても、最初の構想がかなり変更されたのでしょうね。《白の章》って付けておきながら、第2巻では犬のシロがほとんど登場しません。こういうあたりもいい加減に書いてるなと感じてしまいます。


山田あかね 講談社 2009年6月10日発行
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耳をふさいで夜を走る

2009-06-30 21:59:02 | 小説
 冤罪被害者支援団体のスタッフだった並木直俊が、支援のためにスタッフたちが味方だといい続け心理カウンセラーがさらに促進するプログラムを組むうちに冤罪被害者の娘たちが敵と味方を峻別し敵に対しては徹底的に冷酷に振る舞う殺人機械「アルラウネ(またの名をマンドレイク)」となりうると考え、社会の危機を救うためにその候補者3人を事前に殺害することを決意して、連続殺人を敢行するサスペンス小説。
 並木が考える殺害対象の危険性というのが、単なる心理面の話で、殺人計画の動機があまりにも浅薄で説得力がかけらもないので、最初から躓きます。観念だけで何の躊躇もなく人を殺すというのが、「アルラウネ」の危険性だというなら、その可能性だけで何もしていない知人を、それもただ一緒にいた仲間も巻き添えにしながら、躊躇なく殺していく並木こそが、殺人機械そのもの。さすがに最後になってそれを指摘されてショックを受けますが、そんなの並木の言う危険性が説明された時点で当然に感じることだと思うのですが。
 ミステリーとしても、連載時点ではこれでいいんでしょうけど、単行本として読むとき、目次を眺めるだけで結末が読めてしまうのは、ちょっとお粗末。まぁ、最初から犯人が語っているから謎解きとかはもともとない訳ではありますが。
 それにしても、冤罪被害者の家族と冤罪被害者支援団体に対して、よくもまぁこれだけ敵意と偏見を持てるものだとあきれました。作者は悪意はないって聞かれたら言うんでしょうけど、ただでも虐げられている人たちを、歪めて小説化してさらにいじめるというやり方には、作者の姿勢に強い疑問を感じます。


石持浅海 徳間書店 2008年6月30日発行
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