伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ドキュメント長期刑務所

2009-06-06 19:52:09 | ノンフィクション
 刑期8年以上で犯罪傾向の進んだ受刑者が収容されるLB刑務所での受刑者の生活等をレポートした本。
 著者は2人殺害で無期懲役となり20年在監しているそうです。
 私たち弁護士にとっても判決確定後の受刑者の生活は、直接見聞きすることは少なく、こういった本の情報は貴重です。
 2006年の改正監獄法施行で、面会や手紙の制限が大幅に緩和されたり、日常生活の厳しすぎる規制が緩和された様子が事実として書かれているのをみるとホッとします(一方で、著者はそのために刑務官に楯突く受刑者が増えて刑務所内の規律が緩みすぎていると苦言を呈していますが)。
 暴力団でも組のために体を張った受刑者は掟や暴力団の世界を別にすると情けがあり道理もわきまえているが、強盗殺人や強姦殺人の受刑者は他人の感情や心を忖度する能力に欠けている、障害者が頑張って生きたり子どもが不治の病になるようなテレビ番組を見ると組のために体を張った受刑者は泣くが強盗殺人や強姦殺人の受刑者は泣かず「早く死んじゃえ」とか言ったりする(81~82ページ)とか、2006年から差し入れで色つきのシャツが可能になった際に受刑者は自分の都合や欲望のためには常識や礼儀など持ち合わせない人が多いのであまりつきあいのない人にいきなり手紙で頼み送ってこないと勝手に恨むという人が多かった(176~177ページ)とか、やっぱりそうだろうなとは思います。
 受刑者のベテランには処方された薬を配合して特殊な薬を作り、これがよく効くという話(風邪薬で鼻づまり用が「天使の微笑み」、解熱用が「悪魔の囁き」、喉の炎症用が「天国への階段」と名付けられているとか:61~62ページ)とか感心するエピソードもちらほら。
 著者の姿勢として、基本的には処遇に満足している、刑務所のルールを守らない受刑者にはもっと厳しく指導して規律を維持すべきというのが目につき、検閲や今後の処遇の関係でこういう書き方でないと出版しにくいのかなと思いました。そのあたりは割り引いて読んだ方がいいかと思います。


美達大和 河出書房新社 2009年4月30日発行
コメント
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