伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

「やわらか脳」をつくる11のコツ

2009-06-05 22:36:05 | 実用書・ビジネス書
 人の性格・行動パターンの変わりやすい部分と変わりにくい部分を説明して自己変革のための小さな実践を勧める本。
 著者は学者さんですが、文章は自己啓発セミナーのインストラクターかと思うような読みやすさと調子のよさがあります。
 人の性格のうち新規探索傾向(新しいことをやって見たがるタイプ)と損害回避傾向(経験のないことはしたがらないタイプ)は遺伝的影響が強いそうです。「お人好し」度(この本では「報酬依存」と書いていますがそれではわかりにくい)とねばり強さも遺伝的影響が強いとか。
 それでも環境の影響もあり、そういった性格やもともと環境による影響の強い「上昇志向」や「協調性」を変えていくためには、新しいことをする、他人のいいところをまねる、口癖を変えるなどの小さな実践を続けて自信を育んでいくのがいいと、著者は勧めています。口癖を変えるは、否定的なことをいう代わりに、やってみなければわからないなどと口に出すことでその気になり脳が騙されるのだそうです(101ページ)。そのあたりの小さな実践感覚が面白い。早寝早起きをして無駄なことをしている時間を減らしその分健康にもよく新しいことに取り組める(86~89ページ)・・・わかるんですが、なかなか・・・
 性格を変えるためには「やわらか脳」が大切で、ここでいう「やわらか脳」は問題の処理のために決まり切った回路だけではなくいろいろな回路を使えることだそうです。「引き出しが多い」という言い方をよくしますね。そのためにもおっくうがらずに新しいことにチャレンジして人と積極的にコミュニケーションをと提案しています。
 結局、勧められている実践の内容は目新しいこともなく驚きもありませんが、どこまでが遺伝かとかの脳科学の話をお手軽に読めるあたりが少しお得感があるというところでしょう。


石浦章一 李白社 2009年3月29日発行
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日本とアメリカ 2 日本は生き残れるか

2009-06-05 00:55:51 | 人文・社会科学系
 2008年放映のNHKスペシャル「日本とアメリカ」の単行本化。
 放映はこの2巻に書かれている3本が2008年1月~2月で、1巻に書かれた3本が2008年10月~11月で、2巻の方が先。順序を放映と逆にしたのは、出版にタイムリーなオバマ絡みの話題を先にしたかったからでしょうか、それとも2巻の刺激的なテーマを慎重に調整したかったのでしょうか。
 2巻は頭からミサイル防衛を旗頭にして一体化が進む米軍と自衛隊を扱っています。情報共有と自衛隊情報の提供、軍需産業の共同技術開発でミサイル防衛が成り立ち、米軍と自衛隊、日米の軍需産業の緊密化が既成事実化していることが語られています。さすがにここまで微妙なテーマになると、この本でも、国民に十分な情報が提供されているだろうかと、最後の方で少しは疑問を呈しています。
 続いて登場するのは日米貿易摩擦・交渉でアメリカ政府を先導した在日米国商工会議所(ACCJ)。ここでも、さすがにACCJを全面的に賞賛するのは恥ずかしいのか、「ときにはあからさまともいえる容貌・提言を行っている」(80ページ)、「レイク氏の主張を全面的に受け容れることには私たちにも抵抗がある」(100ページ)と批判的な言葉も混ぜてはいますが、全般的にはACCJの正しさ、公平さ、代表のレイク氏の人間味といった面がかなり強調されています。そのレイク氏がUSTRの官僚として日米保険協議を先導しアメリカの保険会社の利益を守り(日本に規制緩和を要求しながらアメリカの保険会社が強かった分野では新規参入規制緩和に反対し)その後アフラックの副会長になったことも「偶然」だとかで批判的な言葉は全く見られません。
 1巻ほどの手放しのすり寄りぶりではないとしても、このテーマで自衛隊と軍需産業、ACCJをここまで持ち上げられると、ため息つきたくなります。
 どうしていいかわからなくなったのか、あとがきは様々な傾向の「論客」の意見を羅列して、何が言いたいのかわからない形で結んでいます。ここはやはり「みなさまのNHK」なんでしょうか。


NHK「日本とアメリカ」取材班 NHK出版 2009年3月25日発行
コメント (2)
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