2008年に放映されたNHKスペシャル「日本とアメリカ」を単行本化したもの。
日米同盟重視の「一体化」戦略とアメリカ側の中国・インド重視:ジャパンパッシングと日本側の嫌米・ナショナリズムといった「空洞化」が同時進行する中で日米関係の最前線を探るという企画だそうです。
1巻ではアメリカ大統領選挙中の両陣営への日本外務省のロビイング工作、東芝のウェスチングハウス買収を代表例としてグローバル化を図る日本企業の経営戦略、日本アニメのハリウッドとの攻防を扱っています。
外務省や原子力産業といった政治問題を取りあげていながら取材対象への手放しに近い賞賛が目につきます。本文もそうですが、あとがきで「私が今回シリーズの取材を通じて感じたのは、外務省や防衛省、自衛隊の幹部や政治家たちが何も好き好んで追随を目指したわけではない、ということだった。」(238ページ)としてアメリカから自立して対等の関係で防衛を考えていくための「一体化」を評価しています(一応、危険はないかとか議論の必要性があるとか言っていますが、軸足が防衛省側にあることが強く感じられます)。東芝のウェスチングハウス買収では、原子力発電所の危険性や放射性廃棄物問題などはもちろん一言も触れず、東芝の技術の安全性・信頼性ばかりが語られています。それだけでなく、アメリカ企業の買収の背景として、日本企業が「3つの過剰」と言われた設備・雇用・負債の過剰解消に必死で取り組んできた結果財務体質が改善したことを挙げて賞賛しています。そのリストラの嵐のおかげで貧困層が拡大し、企業にとっても国内市場がやせ細り不況から脱出できないことにも何の言及もありません。あとがきで、オバマ政権がブッシュ政権の富裕層優遇をやめて教育と社会保障の充実で経済の底上げを図ろうとしていることをアメリカの学者に語らせて少しだけフォローしていますが(それでも企業のことは批判していません)。
NHKの中にも様々な人たちがいることの反映でしょうけど、政治問題絡みのテーマの取材にしては、政治・経済のエスタブリッシュサイドへのこの手放しの追従ぶりは、私には驚きでした。
NHK「日本とアメリカ」取材班 NHK出版 2009年2月25日発行
日米同盟重視の「一体化」戦略とアメリカ側の中国・インド重視:ジャパンパッシングと日本側の嫌米・ナショナリズムといった「空洞化」が同時進行する中で日米関係の最前線を探るという企画だそうです。
1巻ではアメリカ大統領選挙中の両陣営への日本外務省のロビイング工作、東芝のウェスチングハウス買収を代表例としてグローバル化を図る日本企業の経営戦略、日本アニメのハリウッドとの攻防を扱っています。
外務省や原子力産業といった政治問題を取りあげていながら取材対象への手放しに近い賞賛が目につきます。本文もそうですが、あとがきで「私が今回シリーズの取材を通じて感じたのは、外務省や防衛省、自衛隊の幹部や政治家たちが何も好き好んで追随を目指したわけではない、ということだった。」(238ページ)としてアメリカから自立して対等の関係で防衛を考えていくための「一体化」を評価しています(一応、危険はないかとか議論の必要性があるとか言っていますが、軸足が防衛省側にあることが強く感じられます)。東芝のウェスチングハウス買収では、原子力発電所の危険性や放射性廃棄物問題などはもちろん一言も触れず、東芝の技術の安全性・信頼性ばかりが語られています。それだけでなく、アメリカ企業の買収の背景として、日本企業が「3つの過剰」と言われた設備・雇用・負債の過剰解消に必死で取り組んできた結果財務体質が改善したことを挙げて賞賛しています。そのリストラの嵐のおかげで貧困層が拡大し、企業にとっても国内市場がやせ細り不況から脱出できないことにも何の言及もありません。あとがきで、オバマ政権がブッシュ政権の富裕層優遇をやめて教育と社会保障の充実で経済の底上げを図ろうとしていることをアメリカの学者に語らせて少しだけフォローしていますが(それでも企業のことは批判していません)。
NHKの中にも様々な人たちがいることの反映でしょうけど、政治問題絡みのテーマの取材にしては、政治・経済のエスタブリッシュサイドへのこの手放しの追従ぶりは、私には驚きでした。
NHK「日本とアメリカ」取材班 NHK出版 2009年2月25日発行