伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

ヴァンパイレーツ 1~3

2009-06-26 21:08:54 | 物語・ファンタジー・SF
 リリーと海賊の身代金に続いて、ローティーンの少年と少女が主人公の海賊ものを読みました。
 とりあえず既刊の3巻をまとめて読んだのですが、どうも1巻と2巻が原書の第1巻を日本語版では分けて出版し、3巻と4巻が原書の2巻のようですね。4巻は8月に出るようですが、3巻までではいかにも中途半端。それに3巻まででは舞台をドンドン拡げている最中ですから、まだ当分続きそう。1年くらい様子を見てからまとめ読みした方がよさそう。
 お話は、寒村の灯台守の子として生まれた双子の14歳の少年コナーと少女グレースが父の死後財産を奪われてヨットで航海して遭難し、コナーは海賊船ディアブロ号に救われて海賊としての生活に馴染み、グレースは父がいつも口ずさんでいた船歌の吸血鬼の海賊船ヴァンパイレーツに救われ船長と士官候補生ローカンに守られながら不満と好奇心を剥き出しにして船内を嗅ぎまわり危機に会いつつなんとか助けられる日々を過ごし、ついに再会を果たすまでが日本語版1巻・2巻。
 日本語版3巻ではディアブロ号の昔気質の豪快なレイス船長が、他の海賊の恨みを買って絶体絶命の危機に陥りコナーの友人となった有望な戦士ジェズを無駄死にさせることとなり、グレースはレイス船長に不信感を持ってコナーをディアブロ号から引き離そうと画策し、他方グレースが離船した後のヴァンパイレーツでは船長とローカンが危機に陥り、さらにグレースを襲ってヴァンパイレーツから追放されたシドリオ海尉は復讐を誓って次々と人を襲い吸血鬼仲間を増やそうとし・・・という展開。
 日本語版1巻・2巻(原書1巻)で一応の収束を見せる兄妹物語が、日本語版3巻では海賊の中の昔気質の船長と近代的な海賊(海賊連盟・海賊アカデミーって・・・)の対立、ヴァンパイレーツでの人間(ドナー)を尊重する秩序を守る船長・ローカンと吸血の欲望に従う造反派の対立をつくり、物語の展開・継続を志向しています。日本語版3巻までではタイトルのヴァンパイレーツはむしろサブで、ディアブロ号の方がメインの展開ですから、そういう意味でも作者としてはまだこれからなのでしょう。
 時代設定は何と2505年。少なくともディアブロ号では、海賊の構成は男女半々で女性の戦士が登場、船長補佐も一番の剣の使い手も女性です。特に剣の使い手で作戦リーダーのケイトはキャラとしても爽やかです。むしろ主人公の1人で「知的な少女」とされるグレースが、ヴァンパイレーツで自分を守るために努力している人の言うことも聞かず勝手な行動をし続け、物語の世界では誰がみても愚かなふるまいを続け、あまり好きになれないキャラです。
 先行きがどうなるのか見えませんが、間隔が開いて出るのを待って読み続けるほどではないように思えます。


ジャスティン・ソンパー 訳:海後礼子
岩崎書店 

日本語版1巻 死の海賊船
日本語版2巻 運命の夜明け
2009年2月20日発行 (原書は2005年)
原題:VAMPIRATES:DEMONS OF THE OCEAN

日本語版3巻 うごめく野望
2009年5月29日発行 (原書は2006年)
原題:VAMPIRATES:TIDE OF TERROR   
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リリーと海賊の身代金 魔法の宝石に選ばれた少女 上下

2009-06-26 20:09:10 | 物語・ファンタジー・SF
 地球温暖化と砂漠化が進み「崩壊」の後イングランドの大部分が海没した22世紀のイギリスで、イングランドの「残された10州」の領民は横暴な首相に虐げられ支配され、襲撃を繰り返す海賊「リーヴァーズ」に脅えて暮らしていました。イングランドとリーヴァースの対立の影には前世紀の機械類を入手することに血眼になるスコットランドの策略があったのです。漁村で隠遁していた首相の娘レクシーがリーヴァースにさらわれ、激怒した首相が漁師たちを徴兵してリーヴァース討伐に向かわせたことから、戦争をやめさせて恋人アンディを救うために、漁師の娘リリーが、首相の義弟が隠し持っていた宝石を身代金として、少年を装って単身海賊の元に交渉に向かいます。そこに海賊のボスの息子ゼフが、ある場面では友情を、ある場面では憎しみを持って絡み合い、リリーが持ち出した「宝石」が実は高性能人工知能だったことからそれを必死で探すスコットランドも介入し、リリーとレクシーの運命やいかに・・・というお話です。う~ん、説明が長い。
 13歳の少女にして着実な航海術と勇気(無鉄砲というべきか)を持つリリーというキャラには好感を持てます。物語はリリーの視点とゼフの視点で交互に語られ、同じ13歳のゼフがもう一人の主人公なのですが、こちらは、海賊を誇りに思うマッチョな心情の少年ですが、リリーを救ったり敵対したりその心情は定まらず情緒不安定。それが物語の展開を読めなくして面白くしているともいえますが、語り手の一人が人物として見えにくいので、ちょっと入りにくい感じが残りました。そして、リリーの拷問シーンが、ちょっとやり過ぎ感があり、リリーの視点で読むのにも辛さがあります。
 街や海は男の世界で、女性は外に出ないことが当然とされ、リーヴァースの中で発言するアイリーンは、奴隷出身のくせにとゼフに軽蔑されています。その中で男装して旅をするリリー(リロと名乗りますが)の姿は、まるで「リボンの騎士」。過去の時代ならともかく、あえて未来にこういう男尊女卑社会を設定する作者の意図はどこにあるのでしょう。「風の谷のナウシカ」のように核戦争後に文明の利器を失っても、人々が助け合い少女がより伸びやかに生きられる社会を設定してもよかったと思うのですが。


原題:REAVER’S RANSOM
エミリー・ダイアモンド 訳:上川典子
ゴマブックス 2009年2月10日 (原書は2008年)
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