伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

僕らが旅にでる理由

2009-12-08 22:03:53 | 小説
 なにがしかのストレスを抱えている男は平等に患者でありそのストレスを解消させるのは医師の努めであると考えて月曜日から金曜日までそれぞれ別の男と関係を持ち続ける歯科大学2年生高山衿子が、虫歯の木訥な40歳童貞男ラーさんと旅に出て、途中で知り合った恋人募集中のパートタイマー松本パルコと3人で放浪した末に共同生活を始めるという小説。
 冒頭の設定からも予測できるように、わかったようなわからないような観念的な展開で、途中衿子が数日のうちに体重が3倍になるほど太ったとか、突然老女になったとか、妄想と現実が入り乱れて進みます。旅の途中でラーさんが「あ」を見つけたとかいうのは、ジュンブンガク的と言うよりもセサミストリート的ですけど。ラストも、衿子は成長したんだか単に普通の大人になったというんだか。
 不思議な感覚の残る小説ではありますが、スッキリしたり、読み終えたぞという充実感は得にくい感じです。
 タイトルの「僕らが旅にでる理由」というのも、単行本化するときにわざわざつけたそうです(雑誌連載時は「いしのつとめ」)が、女2人と男1人の旅ですし、女が「僕」と自称しても私は別にいいと思いますが作品中で1人称を「僕」と言っているのはラーさん1人(衿子は「わたし」、パルコは「あたし」)で、なぜ「僕ら」なんでしょう。
 奇をてらった不思議感が命の作品でしょうか。


唯野未歩子 文藝春秋 2009年8月10日発行
コメント
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