伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

マノロブラニクには早すぎる

2009-12-27 22:31:43 | 小説
 20代女性向けファッション雑誌の新人編集者小島世里が、無頓着だったファッションやブランドの勉強をしながら、仕事に目覚める過程に、雑誌の仕事もしていたカメラマン(最近はあまりこの言葉使われなくなっていますけど)の死をめぐる謎を絡めたファッション・お仕事・ミステリー小説。
 「マノロブラニク」は、世里が憧れる編集長が愛用している超高級婦人靴のブランド。
 世里が担当する読者モデルのページの仕事に絡めて、ファッション、宝飾品、特に高級靴についての蘊蓄を語る部分が、女性読者向けの売りでしょうが、この部分は関心のない私はパス。
 もともとは翻訳文学の編集者を志して出版社に入社したのに、畑違いの女性誌に配属されて不満を持っていた世里が、誰もがやりたいことをやれる訳じゃないと思い直し、失敗を繰り返しながらプロ意識に目覚めていく過程は快く読めます。
 世里が死んだカメラマンの息子の中学生から父との関係を疑われたことをきっかけにカメラマンの死の謎にのめり込んでいく部分は、ストーリー展開では次第にそちらに軸が移されていきますが、ミステリーとして読むにはネタも展開も物足りない感じです。
 どちらかというと、お仕事ものなりファッションものの軽い読み物と捉えて読んだ方がいいと思います。


永井するみ ポプラ社 2009年10月13日発行
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ナンヤネンの来た日

2009-12-27 08:58:39 | 物語・ファンタジー・SF
 思ったことをはっきり言ってしまうために学校で孤立し、家では「ムーミン」のキャラクター「スナフキン」に憧れて部屋にテントを張って「ミイ」の抱き枕と心で会話し続ける小6少女三村愛野と、愛野のために明るくふるまい支え続ける母夢野が、愛野の最後の運動会の日に、夢野が魔力を持つ石をそれと知らずにたまたま手に入れて愛野が負け続けてきたライバルの転倒を願ったことから夢野に悪い魔法がかかり、愛野が家庭教師として呼ばれてきた日本語ペラペラのフィンランド人青年ペッカ・ナヤネンにフィンランドに伝わる魔法の話を知らされてともに夢野を救おうとするファンタジー。
 思ったことを言ってしまうため孤立する愛野を、みんなと違うのは素晴らしい、フィンランドではみんなと違うのは誇らしいことだと言い、「変な外人」的なしゃべりとキャラで愛野の心を解きほぐしていく「なんやねん」の設定が、ムーミン、北欧神話と絡まりうまく収まっています。
 悪い魔法の話とかでうさんくさくなり、夢野の変身みたいなあたりはおぞましく思います。しかし、全体としては、母子家庭で頑張りすぎた夢野の気持ちへのいたわり、母子のつながり、そして夫への気持ちが、切なくもいとおしく描かれ、「なんやねん」のおとぼけキャラとも相まってほのぼのと読み終えられる作品です。
 舞台が横浜で「なんやねん」というのもちょっとなぁとは思いますが。


かしわ哲 講談社 2009年8月20日発行
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