元売れっ子ホストだった33歳ホームレス男レオが、キャッシュカードを盗む目的で、さえない41歳獣医科大学のドイツ語准教授江都子に近づき、2泊3日の箱根旅行をするうちに恋仲になる中年恋愛小説。
主人公のキャラ設定が、かつては売れっ子ホストだったものの独立して失敗し肝臓を悪くして日雇い仕事もできなくなり今はゴミあさりをしてなんとか食いつないでいる路上生活者と、学生からも「痛い」「けばい」とバカにされドイツ語の単位狙いで近づいてくる男子学生に迫られて有頂天になって箱根旅行を計画したが当日朝にキャンセルされて一人箱根に向かう独身中年教師という、普通の恋愛小説では考えられないしょぼいやるせない組み合わせ。それで切符が余った江都子が駅で声を張り上げてその切符の買い手を探すという導入部も、それを聞いて切符を買った異臭の漂う男から日系4世の新聞記者と言われて信じ込んで宿泊先のバンガローまで付いて来させるという展開も、ありえないほどせこく物欲しげ。小説として読むには、あまりにも夢のないやるせない流れですが、しかし現実の世界ではさえない同士のカップルの方が多数派で嫌な思いをしながら日々を暮らしてそれでも恋愛してるのですから、こういう小説があってもいいとも思えます。
この作品の中でのホームレスの描き方、犯罪者ないし犯罪者予備軍の側面が基調となっていて、レオが江都子に次第に情を移すというそれとは反対方向の終盤とあわせて、ホームレスにさらに偏見を強める読者と理解しようと思う読者とどちらが多いでしょうか。私には前者がずっと多いように思えるのですが。

武谷牧子 日本経済新聞出版社 2009年4月22日発行
主人公のキャラ設定が、かつては売れっ子ホストだったものの独立して失敗し肝臓を悪くして日雇い仕事もできなくなり今はゴミあさりをしてなんとか食いつないでいる路上生活者と、学生からも「痛い」「けばい」とバカにされドイツ語の単位狙いで近づいてくる男子学生に迫られて有頂天になって箱根旅行を計画したが当日朝にキャンセルされて一人箱根に向かう独身中年教師という、普通の恋愛小説では考えられないしょぼいやるせない組み合わせ。それで切符が余った江都子が駅で声を張り上げてその切符の買い手を探すという導入部も、それを聞いて切符を買った異臭の漂う男から日系4世の新聞記者と言われて信じ込んで宿泊先のバンガローまで付いて来させるという展開も、ありえないほどせこく物欲しげ。小説として読むには、あまりにも夢のないやるせない流れですが、しかし現実の世界ではさえない同士のカップルの方が多数派で嫌な思いをしながら日々を暮らしてそれでも恋愛してるのですから、こういう小説があってもいいとも思えます。
この作品の中でのホームレスの描き方、犯罪者ないし犯罪者予備軍の側面が基調となっていて、レオが江都子に次第に情を移すというそれとは反対方向の終盤とあわせて、ホームレスにさらに偏見を強める読者と理解しようと思う読者とどちらが多いでしょうか。私には前者がずっと多いように思えるのですが。

武谷牧子 日本経済新聞出版社 2009年4月22日発行