2002年以降人件費削減によって不況を乗り切り過去最高の企業収益を謳歌した日本企業が、高賃金に耐えられる企業体質を作らずにきたために賃下げ依存症状態になり、そのために消費者でもある労働者の購買力は失われて内需は細り、現場は権限もなく熟練しない非正規従業員ばかりがマニュアルの範囲でのみ対応して顧客サービスが劣化し、現場の発言権はなくまた意欲も失われて物づくりの質も落ちてきている様子を、労働現場の取材によりレポートした本。
「自己責任」「市場主義」という企業も政府も責任を取らない姿勢で、セーフティネットを整えようともしない日本で、派遣労働や偽装請負で企業がやりたい放題に労働者を安く使い捨てにできる状態を作ってしまえば、派遣切りによって企業は即ホームレス製造機となる。派遣会社は、お客様である派遣先の意向をくみ取って労災を隠し、物言う労働者は派遣会社が自主的に排除するから、派遣先企業が手を汚さずとも法律の規制を事実上無視した好き放題の結果を得られる。「規制緩和」の名の下に行われてきた最近の日本の「改革」が、いかに経営者にだけ都合のいいものであったかが語られています。この本でも紹介されているように、そんなことやる前からわかりきったことで、労働側や学者は法改正前から指摘していたのですが。
この本のタイトルや書きぶりは、そういうやりたい放題が、企業自身の首を絞めるようになってきたというスタイルを取っています。今どきの日本ではそういう書き方が書きやすいのですが、そういうパターンになる以前の段階で(要するに企業自身が困らなくても)労働者の生活や人権のレベルでの議論がスッと入る社会であって欲しいと思います。
竹信三恵子 岩波新書 2009年4月21日発行
「自己責任」「市場主義」という企業も政府も責任を取らない姿勢で、セーフティネットを整えようともしない日本で、派遣労働や偽装請負で企業がやりたい放題に労働者を安く使い捨てにできる状態を作ってしまえば、派遣切りによって企業は即ホームレス製造機となる。派遣会社は、お客様である派遣先の意向をくみ取って労災を隠し、物言う労働者は派遣会社が自主的に排除するから、派遣先企業が手を汚さずとも法律の規制を事実上無視した好き放題の結果を得られる。「規制緩和」の名の下に行われてきた最近の日本の「改革」が、いかに経営者にだけ都合のいいものであったかが語られています。この本でも紹介されているように、そんなことやる前からわかりきったことで、労働側や学者は法改正前から指摘していたのですが。
この本のタイトルや書きぶりは、そういうやりたい放題が、企業自身の首を絞めるようになってきたというスタイルを取っています。今どきの日本ではそういう書き方が書きやすいのですが、そういうパターンになる以前の段階で(要するに企業自身が困らなくても)労働者の生活や人権のレベルでの議論がスッと入る社会であって欲しいと思います。
竹信三恵子 岩波新書 2009年4月21日発行