伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

心をつなぐ左翼の言葉

2009-12-05 23:17:38 | 人文・社会科学系
 元共産党員でセゾングループ経営者にして詩人の著者の対談。
 対談のはじめで語られている、「理論的には正しくても、相手の心に響かないというのでは意味がない」、右も左も知識人の言葉は大衆の言葉になっていない、自身の感性と一体になっていない(14~15ページ)という問題意識の下で、護憲のための運動のあり方、日本の社会と運動の今後、プロレタリア文学などを語っています。
 改憲はアメリカにあごで使われるような自衛隊にするということを明文で約束することだから完全に独立を失うことになる(35ページ)ことに光を当ててアメリカへの従属を主矛盾として護憲の統一戦線を形成すべきだという指摘には、ドッキリします。アメリカの占領政策転換で戦犯たちが復権された際に、アメリカの都合での偽の復権は拒否するという国粋主義者は誰一人おらずみんなアメリカに尻尾を振った(65~66ページ)という指摘にも。派遣切りをする企業経営者の強欲さや派遣法を認めた連合の無責任さの指摘も、元大企業経営者に言われても・・・という気もしますが、新鮮でもあります。
 対談なので、提起された問題にきちんと回答がなかったり詰め切れてない部分も多いですが、今という時代の気分にはフィットする読み物にはなっています。


辻井喬 かもがわ出版 2009年10月23日発行
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ネットビジネスの終わり

2009-12-05 16:57:37 | 実用書・ビジネス書
 携帯電話(といっても端末の製造)、出版・新聞・雑誌、アニメ・ゲームの各業界の事情を、主として資金調達と投資の視点から検討論評した本。
 「ネットビジネスの終わり」のタイトルを付けながら、むしろネットの周辺というか、ネットビジネスでコンテンツを喰われて売上が減少している業界の側からネットビジネスやネットユーザーの「ネット上の情報は無料」という意識に文句を言っているものです。勝ち組企業側の目線で、日本の企業を上位1つかせいぜい2、3に統合して、日本のユーザーの細かい要求に応じずに世界市場を目指せ、格差社会などと喧伝して社会保障の充実を求めるなどもってのほか、国の資金は日本企業の海外進出に回せという議論を展開しています。よい物を作ればいいのではなく、それをいかに売るかとセットで考える必要があり、それをファイナンスとセットした形で、つまり巨額の資金調達で実行して行けということです。前半の著者がファイナンスのアドヴァイスをする業界に関してはそういいながら、ネット業界については、「Yahoo!や楽天といった規模の経済でのプレイができる強者企業を作ってしまった」(174ページ)などと否定的な書き方をしています。どちらかといえば、ネットビジネスに終わって欲しいという願望を持つ著者が書いた「ネットビジネス批判」という感じです。
 日本の大手企業のために底辺労働者やユーザーは我慢しろという主張に共感する人はどれくらいいるんでしょうか。


山本一郎 PHP研究所 2009年11月4日発行
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