伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ローカル・ガールズ

2010-10-21 21:12:33 | 小説
 若い女の元に走った父親に捨てられた母親とともに、アメリカのニューヨーク州の小さな町に住む少女グレーテル・サミュエルソンが、優秀だった兄の破滅、うちひしがれる母親の姿と母親の病気、幼なじみの親友ジルの妊娠と高校中退、自身の覚醒剤の売人との恋愛等に翻弄されながら過ごす青春小説の短編連作。
 グレーテル自身勉強はできる方だし、兄のジェイソンに至ってはハーバード大学から早期入学を許可された秀才なのに、家庭環境や地域の環境から、些細なことから人生を狂わせていく様子は、読んでいて悲しい。アメリカン・ドリームの反対側に無数のこういった悲しい話が埋もれていると、そしてもちろん日本にもこういう話はあふれていると思うと。
 全体を通して、けだるい物憂げな、そしてもの悲しい気持ちになる本です。最後は、まぁ、生きててよかった、生きてりゃいいこともあるさということではあるんですが。


原題:LOCAL GIRLS
アリス・ホフマン 訳:北條文緒
みすず書房 2010年9月10日発行 (原書は1999年)
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野川

2010-10-21 21:12:21 | 小説
 父親が事業に失敗して両親は離婚、仲の悪い伯父の下で働くことになった父親に付いて逃げるように転校した中学2年生の少年が、転校先で通信のために伝書鳩を飼う新聞部とその顧問の国語教師の一風変わった面々に囲まれ、立ち直っていく青春小説。
 傷心転校生ものなんですが、意地悪な人物がまったく出てこないし、どろどろした部分がほとんどない、すがすがしい展開。
 顧問の教師が語る現実に見ていないけれども話を聞いて頭に描いた忘れられない光景や、鳩を飛ばしたときに主人公が心に描く鳩の視点など、直接体験し目で見たことを超えた考察や想い・想像力の大切さが強調されています。
 タイトルの野川は、武蔵野台地の崖地に建つ中学校のそばを流れる川ですが、その野川と周辺の台地や水系の描写がそこかしこに挟まれ、その開発と復元の歴史やそれに応じて生き延びる姿、伏流水の存在など、環境の変化に対する強さというかたくましさや見えるところがすべてでないというシンボルとして位置づけられているように思えます。


長野まゆみ 河出書房新社 2010年7月30日発行
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