伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

2010-10-30 21:48:09 | 物語・ファンタジー・SF
 刑務所不足対策として試行された「消失刑」を受けることになった受刑者が、他人に存在を知られず他人と通信できないことの苦痛を噛みしめる様子を描くSF小説。
 この刑では受刑者は首に金属製のリングをはめ、リングを外そうとしたり、違法行為や他人との通信などの禁じられた行為をしようとするとリングが首を絞めて制圧することになっています。リングの効果で受刑者の姿は他人からは「盲点」に入った状態となって見えないことになっています。
 多数の人を目の前にしながら、自分の存在を知らせることができず、相手とコミュニケーションを取ることができないことの苦しみを主人公が味わう様子が主要なポイントとなっています。
 仕事で一緒になった魔性のキャンペーンレディとデート中に絡んできた元彼に重傷を負わせてしまったために刑を受けることとなった主人公は、もともとまじめな人物。そのために人知れず、しかし主人公の前で行われようとする犯罪行為に我慢できず、止めようとするけど、リングのために止められないことに悩む主人公の嘆きが哀感を誘います。
 絶望的な条件の下でも、なんとかコミュニケーションを図ろうとする姿勢に人間の性と希望が見え、悲しくもホッとするというような読後感です。


梶尾真治 光文社 2010年2月25日発行
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自由高さH

2010-10-30 18:13:29 | 小説
 かつてバネ工場だった廃屋を安く借りたもののもくろみ違いで引越ができなくなって週末を過ごす基地として日曜大工のまねごとを続ける不動産会社従業員の須永英朗とそこを訪れる別れた恋人や家主の元バネ職人やその妻らとが交わす世間話でその日常と思いを描いた小説(これで122文字・・・)。
 家主の元バネ職人の過去に始まり、その時間軸と交友関係で縦横に広がりを見せ、須永英朗の大工仕事と交差させ、ストーリーは漂流し続ける感じで、どう落とすのかなという読み方をしてしまいます。
 話としては特に何かが起こるというわけでもなく、世代や生活の違う人との交流をどこかほのぼのとした思いで感じさせるという作品かなと思います。
 私たち法律家にありがちな長文はそれだけで悪文とよく言われますが、この作品の文体、むりやり長くしてるのではと思うほど、異様に長い。一文200字超えは当たり前で、最長は、たぶん、なんと一文で347文字(87ページ7行目から88ページ4行目まで)。この文は引用の会話の中に句点がありますが、たぶんその次に長い文は322文字句点なし(73ページ3行目から12行目まで)。作品の短さの割に読むのに時間がかかるのはそういう事情もあるでしょう。自分でも、長文はやはり避けようと決意を新たにしました。


穂田川洋山 文藝春秋 2010年8月30日発行
文學界新人賞
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