性犯罪をめぐる法律の規定、刑事手続、裁判例とその認定、犯罪統計等について概説した本。
法律家の性別割合が男性に偏っているために性犯罪の被害者について、特に被害者の証言の信用性の判断についての理解が足りないことを指摘しつつ、他方において犯罪の性質上客観的証拠が少なく冤罪の場合の被告人の防御が難しく刑事裁判においては合理的疑いを残さない立証がなされなければ無罪となることに加え、性犯罪の再犯率は実は他の犯罪と同レベルかむしろ低いことも論じていて、ほどよいバランス感が見られます。
初学者向けを志向しているのだとは思いますが、法律用語が多く、説明がない用語も結構あるし、用語解説も必ずしも易しくなかったりして、法学部学生か法律家業界人でないとちょっと難しいかも。
最初の方で強姦罪と強制わいせつ罪を分けることには合理性がないと主張していますが、性犯罪の中でも特に強姦被害者の心の傷が重いという指摘(43ページ)もあり、それなら強姦罪を区別して重くすることに反対しなくてもというすっきりしない感が残ります。裁判例を比較的多数紹介しているのは参考になりますが、犯罪の成立(有罪・無罪)についての部分と量刑判断についての部分は分けて論じて欲しいなという気はしました。また1審判決の紹介と書いているのに引用文で「原判示」と書かれている(58ページ)のは、1審判決のはずもなくケアレスミスでしょうね。
吉川真美子 世織書房 2010年4月15日発行
法律家の性別割合が男性に偏っているために性犯罪の被害者について、特に被害者の証言の信用性の判断についての理解が足りないことを指摘しつつ、他方において犯罪の性質上客観的証拠が少なく冤罪の場合の被告人の防御が難しく刑事裁判においては合理的疑いを残さない立証がなされなければ無罪となることに加え、性犯罪の再犯率は実は他の犯罪と同レベルかむしろ低いことも論じていて、ほどよいバランス感が見られます。
初学者向けを志向しているのだとは思いますが、法律用語が多く、説明がない用語も結構あるし、用語解説も必ずしも易しくなかったりして、法学部学生か法律家業界人でないとちょっと難しいかも。
最初の方で強姦罪と強制わいせつ罪を分けることには合理性がないと主張していますが、性犯罪の中でも特に強姦被害者の心の傷が重いという指摘(43ページ)もあり、それなら強姦罪を区別して重くすることに反対しなくてもというすっきりしない感が残ります。裁判例を比較的多数紹介しているのは参考になりますが、犯罪の成立(有罪・無罪)についての部分と量刑判断についての部分は分けて論じて欲しいなという気はしました。また1審判決の紹介と書いているのに引用文で「原判示」と書かれている(58ページ)のは、1審判決のはずもなくケアレスミスでしょうね。
吉川真美子 世織書房 2010年4月15日発行