伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

泣くほどの恋じゃない

2012-10-11 00:37:19 | 小説
 29歳バツイチの学習塾教師有島凪子が元生徒の父親黒木陽介との間で2年半にわたって続けた不倫の日々と陽介がいない夜に自分の心を落ち着かせるために手紙を書き始めそれから小説を書き始めて作家になるまでを描いた恋愛小説。
 電話の声に一目惚れし、柔らかなカーディガンに触りたい欲求から決意が崩れてゆく恋の始まりはロマンティックで、そういうこともあるのかなと思わせてくれます。また前半の一途に恋し狂おしくも無邪気に逢瀬を楽しみ陽介を繰り返し求める凪子の姿は、おじさん世代にはうらやましく微笑ましいといえますが、何よりも夢のような話。破綻する後半も陽介や妻と凪子の間での修羅場もなく、不倫の話としては男の側に都合よすぎる展開。こういうことをあわせて考えてみると、47歳の妻子ある男が容姿や財力等の描写なく18歳年下の女性から恋い焦がれられるという設定は、ごく普通のさして取り柄もない少女が学園一の人気者から愛されるという少女漫画の典型と同じで、中年男の読者が幻想・妄想を持って作品に入れるように計算したものと考えるべきなのでしょうね。
 タイトルの「泣くほどの恋じゃない」は、会えない夜が寂しいと泣く凪子に対して陽介が明日の朝にはまた会えるのに泣くほどのこととちゃうやんかとなだめ、後日凪子があれは泣くほどの恋じゃなかった、世にも幸せな恋だったと振り返っていることに由来しています。でも、世にも幸せな恋は「泣くような恋じゃない」ならわかりますけど、「泣くほどの恋じゃない」っていうのはかなり違和感があります。恋愛小説であればこそ、恋する心情のニュアンスには気を遣って欲しいと思うのですが。


小手鞠るい 原書房 2012年3月16日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする