伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

キノコの教え

2012-10-29 19:48:46 | 自然科学・工学系
 キノコについてのさまざまな解説をした本。
 植物の大半はキノコやカビと共生していて根毛では入り込めない隙間に菌根菌の菌糸が入り込んで水分やミネラルを吸収して植物に送っていること、最近増えている松枯れは大気汚染や土壌汚染によるものと見た方がよく松と共生する菌類が増殖しやすいように下草や落ち葉を掃除した上で炭を撒くことで樹勢回復することが多いこと、大豆栽培で炭に肥料を少量混ぜて撒くと驚くほど根粒がついて収量も化学肥料とを与えた場合と変わらなくなりこれは大発見だと思ったが調べてみると元禄時代の農業全書にその教えが記載されており本来は古くからの農民の知恵であったことなど、興味深く読めました。
 食べられるキノコかどうかの見分け方については、色も「茎が裂けるかどうか」も当てにならず、「ルールがないのが唯一のルール」だとか。
 少し話が細切れであちこちに飛ぶ感じがすること、最後はキノコのことではなくやや観念的な現代文明・政治批判でまとめられていることで、ちょっと読みにくくなっているかなと思います。「災害に強いマツ林を造るためには、できるだけ小さな苗を植えて、マツが自力で根をはり、菌根を保ち続けるようにしなければならない。大きなものを植えた方が、人の目には立派に映るが、かならず枯れるだろう」(183ページ)とかいう批判は実践的な知識を伴うもので納得ものですけど。


小川眞 岩波新書 2012年4月20日発行
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする