伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

空中都市

2012-10-27 20:21:30 | 小説
 かつてフィギュアスケート選手だった39歳の可奈子が、自分の人生は自分で決める一人で何でもできると啖呵を切ってその実思いを寄せる映画助監督の使い走りの21歳男の気を引きたくて高校には行かないと言い張っている中3の娘晴海をニューヨークで置き去りにして、スケート選手時代の恋人流との想い出をたどって単身ペルーに旅行するという設定の恋愛・ペルー紀行小説。
 可奈子サイドと晴海サイドを交互に書いて進行していきますが、おじさんにはいかにも未熟でさほど誠実でもない寺内に晴海が夢中になる様子の危うさは「ふ~ん、そういうもんかね」としか感じにくく、可奈子のペルー旅行中心の展開で晴海の恋はおまけくらいに思えます。
 あとがきによれば、この作品は、作者のデビュー作「ガラスの森」(1992年)の続編「ふれていたい」(2006年。2009年の文庫本化の際に「はだしで海へ」と改題)の続編で完結編なのだそうです。10代の可奈子と流の物語を読んでいないためか、切れ切れに触れられる流は少し像が結びにくく、可奈子がペルーそしてマチュピチュを訪れた目的・きっかけとラストの関係にはちょっとそれでいいのかと疑問というか違和感を感じました。この作品だけ読む限りでは、むしろペルー紀行が書きたかったのかもと思ってしまいます。


小手鞠るい 角川春樹事務所 2012年2月8日発行
コメント
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