幼い頃から殺人刀と言われ真剣勝負を言う父矢田部将造に防具も着けずに木刀での地稽古でしごき続けられて父親の剣道に反発し剣道は殺し合いじゃないと言い続ける剣道5段の矢田部研吾が、父親と木刀で立ち会って頭を叩き割り植物状態にして、アルコール中毒になった後に、師匠となる僧光邑雪峯8段に見いだされて高校の剣道部のコーチをするうち、部員が駅での小競り合いの怨みから勝負を挑んだ元陸上部現帰宅部の高2羽田融の自己流の古武道ふうの立ち会いを見てその素質を感じ、剣を通して通じ合っていく剣道小説。
剣の世界の描写には引き込まれるものがありますが、将造と研吾のかつての「巨人の星」をも超える大時代的なスパルタ親子関係の陰惨さ、研吾がアルコールに逃げ溺れる姿など、重苦しい叙述が多く、読んでいて暗い気持ちになります。
また羽田融については、特に練習したこともないのに天才的な剣の使い手扱いで重めの物語にしては軽い設定がそぐわない感じが残り、さほど獰猛な性格ではないむしろ軽めのタイプなのに後半は将造が乗り移ったかのような殺人刀に走るという描かれ方にも違和感というか作り手の迷いまたはブレを感じました。

藤沢周 文藝春秋 2012年5月25日発行
「文學界」2009年6月号~2011年9月号連載
剣の世界の描写には引き込まれるものがありますが、将造と研吾のかつての「巨人の星」をも超える大時代的なスパルタ親子関係の陰惨さ、研吾がアルコールに逃げ溺れる姿など、重苦しい叙述が多く、読んでいて暗い気持ちになります。
また羽田融については、特に練習したこともないのに天才的な剣の使い手扱いで重めの物語にしては軽い設定がそぐわない感じが残り、さほど獰猛な性格ではないむしろ軽めのタイプなのに後半は将造が乗り移ったかのような殺人刀に走るという描かれ方にも違和感というか作り手の迷いまたはブレを感じました。

藤沢周 文藝春秋 2012年5月25日発行
「文學界」2009年6月号~2011年9月号連載