伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

おしかくさま

2013-09-02 08:37:19 | 小説
 インターネットのオフィシャルサイトで「おしかくさまはお金の神様」として、時期を定めて指定される特定のATMをお社とし、「無紋のお札」を1万円で販売する詐欺的宗教を信じる老婆たちと、それに巻き込まれた元高校教師とうつで引きこもっていたその娘らの様子を通じて、お金と宗教について語る小説。
 少女タレントに神を名乗らせインターネットで白紙を1万円で販売して1億円の収入を上げた詐欺的宗教を、詐欺と言いきれないように印象づける終盤は、世の中に多数跋扈している金儲けのために神を語る連中を擁護し容認するもので、こういう作品を書きたいというセンスに疑問を感じます。
 民生委員をしている主婦アサミ、その母の主婦洋子、元高校教師の父、うつで引きこもり中の妹ミナミ、小学生の娘ユウの5人が代わる代わる語る形で進められます。それぞれに少し語り口が変えられていますが、この形はやはり2人か3人までだと思います。5人で小刻みにやられると、ついて行けないわけじゃないですが、なんか居心地が悪い。特にミナミだけ文体が大きく変わり長文が駆使されているのですが、一番長い文で15行、句読点込みで560字にも及んでいます(115~116ページ)。文が長すぎると悪評の法律家業界に身を置く者として、準備書面(民事裁判で主張を書いて裁判所に提出する書類)ならあるかも、とは思いつつ、読む側になるとやっぱりこの長さは読みにくい。


谷川直子 河出書房新社 2012年11月30日発行
第49回(2012年)文藝賞受賞作
コメント
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