伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

スウィート・ヒアアフター

2013-09-16 22:10:19 | 小説
 京都のアトリエで仕事をする立体造形作家の恋人洋一と遠距離恋愛していた小夜が、京都でのデートの途中交通事故に遭い、腹部に作品の材料の鉄の棒が深々と刺さって臨死体験するが結局は生き延び、他方洋一は即死してしまい、2年たって30歳となりようやくふつうに生活ができるようになるが、なお心の傷は癒えず、この世をさまよう霊の姿が見えるようになり、洋一の家族や近隣で知り合ったゲイの青年とつきあいながら回復していく悲劇体験サバイバル小説。
 恋人が死んでしまった後のその両親とのつきあい、母親を失ったマザコンでゲイの青年とのつきあい、異母姉弟で駆け落ちしたが姉を失い偲び続ける中年男との関係が、どこかゆるゆるとしていて、いい感じです。
 「あとがき」で作者は東日本大震災を経験した全ての人に向けて書いたと述べています。恋人の死に途方に暮れる小夜がゆるゆると立ち直っていく姿はホッとするところがあります。ただ、2年間仕事をしなくても生活できて、その後も貯めた結婚資金を取り崩して近所の沖縄バーに行くのを日課としているというのは、平均的な被害者・被災者からすればずいぶんと恵まれた立場だよなぁとも感じてしまいます。


よしもとばなな 幻冬舎文庫 2013年8月1日発行 (単行本は2011年11月)
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