日本で商店街が形成され衰退してきた経緯を考察し再生の道について論じる本。
商店街は伝統的な存在ではなくほとんどの商店街は20世紀になって人為的につくられた。第一次世界大戦後の不況で農村からの離農者が都市に流入し、その多くの部分が工場労働者ではなく零細小売業者となった。物価の乱高下や粗悪品の流通に対抗するため消費者は協同組合による購入を、行政は公設市場の創設をし、また百貨店が登場した。零細小売業者がこれらに対抗するために専門店の集積という構想を探っていたところに、戦時体制による距離制限や強制転廃業といった小売業規制が組み合わさって商店街が誕生していったというのが著者の見方です。そして戦後小売自営業者は百貨店法→大店法によりデパート、スーパーの大規模店舗出店を阻止し、既得権を死守してきたが、家族経営にこだわりその維持が比較的容易なコンビニ経営者となる者が増えて内部から専門店性を切り崩され(コンビニの本部を経営するのは大店法で都市中心部に出店できなかったスーパーなどである)、日米構造協議後の「社会資本整備」と称する公共事業でつくられた道路沿いの郊外店舗に客を取られ衰退していったと指摘されています。
サブタイトルにある、再生の道については、著者の述べるところは少なく、商店街、そしてそれぞれの店舗について、地域の協同組合や社会的企業に経営権や土地の管理権限を与えてはどうかということが指摘されているくらいです。
商店街と地域社会、特に高齢者など自動車による郊外店での買い物が困難な住民の結びつきを考えつくり強化していく試みは重要に思え、著者の指摘ももっともに思えますが、この本自体は歴史的経緯の解説に大半が割かれていて、内容的にも、地元小売業者に出店を阻まれたスーパーが日本独特の都市中心部の小規模店舗サイズのコンビニで商店街の小売店舗経営者をつり上げていくといったあたりが読みどころという気がします。

新雅史 光文社新書 2012年5月20日発行
商店街は伝統的な存在ではなくほとんどの商店街は20世紀になって人為的につくられた。第一次世界大戦後の不況で農村からの離農者が都市に流入し、その多くの部分が工場労働者ではなく零細小売業者となった。物価の乱高下や粗悪品の流通に対抗するため消費者は協同組合による購入を、行政は公設市場の創設をし、また百貨店が登場した。零細小売業者がこれらに対抗するために専門店の集積という構想を探っていたところに、戦時体制による距離制限や強制転廃業といった小売業規制が組み合わさって商店街が誕生していったというのが著者の見方です。そして戦後小売自営業者は百貨店法→大店法によりデパート、スーパーの大規模店舗出店を阻止し、既得権を死守してきたが、家族経営にこだわりその維持が比較的容易なコンビニ経営者となる者が増えて内部から専門店性を切り崩され(コンビニの本部を経営するのは大店法で都市中心部に出店できなかったスーパーなどである)、日米構造協議後の「社会資本整備」と称する公共事業でつくられた道路沿いの郊外店舗に客を取られ衰退していったと指摘されています。
サブタイトルにある、再生の道については、著者の述べるところは少なく、商店街、そしてそれぞれの店舗について、地域の協同組合や社会的企業に経営権や土地の管理権限を与えてはどうかということが指摘されているくらいです。
商店街と地域社会、特に高齢者など自動車による郊外店での買い物が困難な住民の結びつきを考えつくり強化していく試みは重要に思え、著者の指摘ももっともに思えますが、この本自体は歴史的経緯の解説に大半が割かれていて、内容的にも、地元小売業者に出店を阻まれたスーパーが日本独特の都市中心部の小規模店舗サイズのコンビニで商店街の小売店舗経営者をつり上げていくといったあたりが読みどころという気がします。

新雅史 光文社新書 2012年5月20日発行