リストラされたアパレル店長正岡沙智がファッション雑誌の編集部を希望して出版社に就職するが販売促進部に配置され、不満に思いながら書店営業を続けるうちに営業のおもしろさに目覚めていくビジネス小説。
出版業界や書店の実情・仕組みをまったく知らず、それにもかかわらずそれを学ぼうともしないまま、アパレル店長の経験から来るプライドだけは高く同僚や書店員、他社の書店営業を根拠なく見下し、営業成績が上がらないのは書店員の性格が悪いなどと不平を言い続ける前半の主人公には、私はおよそ共感できませんでした。性格悪く描かれている書店側の正岡沙智に対する評価は悪口ではなくどうみても公平で正しい評価と最初から思えますし、ましてやライバルの有森志保子についても最初の言動からして有森は勉強していて商品知識が豊富な上に努力してそれぞれの書店を見て営業していることが理解できるのに対して正岡沙智は出版社の営業にもかかわらず本はろくに読まず自分が勧める商品の内容さえ知らない上にそのことさえ自覚もなく反省もないというどうしようもない状態で、書店の実情や有森の真の姿が紹介される中盤以前から、正岡沙智のジコチュウで独りよがりの高飛車さ加減に呆れてしまいます。その共感しようもない低レベルの人物が成長していくという読み物なのですが、ダメダメぶりが研修先の書店の店長とアルバイト店員に正確に指摘される第3章の後、第4章に入ると突然正岡沙智が書籍の流通の仕組みなどに詳しくなり同僚をやり込めたりするのが、話が飛んでいる感じがして違和感を持ちました。ここは、一念発起して過去の自分を反省して勉強する描写がないと、ちょっとついて行けないように思えます。それがあればもう少しすんなりと後半の正岡沙智に共感して成長物語として素直に読めるのに、と思いますし、人物像としてもつながるのにな、と思います。隔月紙への連載だったら、間が空いたのでそこで飛んじゃったのかな、残念だけどという感想となるところでしょうけど、書き下ろしと言われると、なんでそこを書かないのかなと強く疑問に思います。まぁ自分の不勉強をきちんと見据えて反省するということは、現実にはあんまりないし、ということでしょうか。
里見蘭 中央公論新社 2013年4月25日発行
出版業界や書店の実情・仕組みをまったく知らず、それにもかかわらずそれを学ぼうともしないまま、アパレル店長の経験から来るプライドだけは高く同僚や書店員、他社の書店営業を根拠なく見下し、営業成績が上がらないのは書店員の性格が悪いなどと不平を言い続ける前半の主人公には、私はおよそ共感できませんでした。性格悪く描かれている書店側の正岡沙智に対する評価は悪口ではなくどうみても公平で正しい評価と最初から思えますし、ましてやライバルの有森志保子についても最初の言動からして有森は勉強していて商品知識が豊富な上に努力してそれぞれの書店を見て営業していることが理解できるのに対して正岡沙智は出版社の営業にもかかわらず本はろくに読まず自分が勧める商品の内容さえ知らない上にそのことさえ自覚もなく反省もないというどうしようもない状態で、書店の実情や有森の真の姿が紹介される中盤以前から、正岡沙智のジコチュウで独りよがりの高飛車さ加減に呆れてしまいます。その共感しようもない低レベルの人物が成長していくという読み物なのですが、ダメダメぶりが研修先の書店の店長とアルバイト店員に正確に指摘される第3章の後、第4章に入ると突然正岡沙智が書籍の流通の仕組みなどに詳しくなり同僚をやり込めたりするのが、話が飛んでいる感じがして違和感を持ちました。ここは、一念発起して過去の自分を反省して勉強する描写がないと、ちょっとついて行けないように思えます。それがあればもう少しすんなりと後半の正岡沙智に共感して成長物語として素直に読めるのに、と思いますし、人物像としてもつながるのにな、と思います。隔月紙への連載だったら、間が空いたのでそこで飛んじゃったのかな、残念だけどという感想となるところでしょうけど、書き下ろしと言われると、なんでそこを書かないのかなと強く疑問に思います。まぁ自分の不勉強をきちんと見据えて反省するということは、現実にはあんまりないし、ということでしょうか。
里見蘭 中央公論新社 2013年4月25日発行