日本周辺の深海底の構造と成り立ち(第1章)、メタンハイドレート、熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、レアアース泥などの海底資源(第2章)、深海の生物(第3章)、深層循環、二酸化炭素吸収などの深海と地球環境の関係(第4章)、東日本大震災と深海(第5章)など深海、特に日本周辺の深海にまつわる知識を一般向けに解説した本。
「はじめに」から、領海と排他的経済水域を合計した面積では日本は世界第6位に加えて、水深5000メートルより深い海域の体積では日本は世界一(3ページ)とかいうトリビアを披露し、上々の掴みで読者の好奇心をそそっています。水深5000メートルを基準にする理由や、水深5000メートルより深い海の体積にどれだけの意味があるのかは疑問ですけど。
資源と生物と並べていますが、やはり資源の方に力点がある印象です。ただ海底資源についても存在する「原始資源量」ではなくこれに回収率をかけた「埋蔵量」を見る必要がある、環境のリスク、事故のリスクを考えると海底資源を現実に利用することは簡単ではない、過剰な期待を抱くことは禁物と熱を冷ましているのは好感が持てます。中国の輸出規制で注目されたレアアース資源についても、中国の輸出規制の結果代替材料の開発が活発化して需要が減少し投機マネーも逃げて価格が大幅に下落したことから、海底資源の活用はコスト面でも壁が厚いと指摘されています(102~104ページ)。海底資源の探査などで国が大々的に資金を出すとリスクについて誰も触れなくなりリスクから目をそらすことになるので失敗しやすいと指摘している(89~90ページ)のもなるほどと思います。
私としては、日本周辺の深海底の成り立ちを説明する第1章や、第3章で触れられている相模湾の構造などが興味深く読めましたが、海底資源の開発が容易ではなく、開発側が煽る過剰な期待を戒めるべきことも参考になりました。

瀧澤美奈子 講談社ブルーバックス 2013年7月20日発行
「はじめに」から、領海と排他的経済水域を合計した面積では日本は世界第6位に加えて、水深5000メートルより深い海域の体積では日本は世界一(3ページ)とかいうトリビアを披露し、上々の掴みで読者の好奇心をそそっています。水深5000メートルを基準にする理由や、水深5000メートルより深い海の体積にどれだけの意味があるのかは疑問ですけど。
資源と生物と並べていますが、やはり資源の方に力点がある印象です。ただ海底資源についても存在する「原始資源量」ではなくこれに回収率をかけた「埋蔵量」を見る必要がある、環境のリスク、事故のリスクを考えると海底資源を現実に利用することは簡単ではない、過剰な期待を抱くことは禁物と熱を冷ましているのは好感が持てます。中国の輸出規制で注目されたレアアース資源についても、中国の輸出規制の結果代替材料の開発が活発化して需要が減少し投機マネーも逃げて価格が大幅に下落したことから、海底資源の活用はコスト面でも壁が厚いと指摘されています(102~104ページ)。海底資源の探査などで国が大々的に資金を出すとリスクについて誰も触れなくなりリスクから目をそらすことになるので失敗しやすいと指摘している(89~90ページ)のもなるほどと思います。
私としては、日本周辺の深海底の成り立ちを説明する第1章や、第3章で触れられている相模湾の構造などが興味深く読めましたが、海底資源の開発が容易ではなく、開発側が煽る過剰な期待を戒めるべきことも参考になりました。

瀧澤美奈子 講談社ブルーバックス 2013年7月20日発行