伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

右?左?の不思議

2013-12-06 23:07:45 | 自然科学・工学系
 鏡に映した形(鏡像)が回転させても原像と重ならない関係にあることを手のひら対称性として、平面ではFとその鏡文字など、貝殻やツルの右巻きと左巻き、正四面体構造:実質的には炭素原子の4本の腕にそれぞれ別の分子が結合したアミノ酸の左旋性と右旋性などを取り上げて、構造としては対等にありうる右と左について自然界ではそれが一方に偏るケースが多いことについて注意を喚起し解説する本。
 サリドマイドの右旋性の分子は睡眠・鎮静効果があり重篤な副作用はないのに左旋性(鏡像)の分子は軟骨を作る酵素の働きを妨げ発達障害を起こす(98~107ページ)というように、薬品・食品などで、同一の化学組成なのに手のひら対称性がある2つのタイプ(左旋性と右旋性)で片方は好ましい効果があり、他方は害があるか少なくとも好ましい効果がないことが多々あり、自然界ではアミノ酸は左旋性、炭水化物は右旋性のものだけが生物体に使用されるが工業的に製造すると特に制御しなければ左旋性のものと右旋性のものは同じ割合でできてしまい、一方のみを製造する技術が必要になるということが、著者の専門分野で、最終的にはそこに行きたいのですが、著者の趣味的なものも含めて右巻き・左巻き、鏡像の話が親しみやすい例を多数挙げて説明されています。それでも最後の左旋性と右旋性のあたりは少し難しい感じが残りますが、いきなりアミノ酸の分子構造の図を出されるよりは、鏡像問題に入り込みやすくなっています。
 らせんの右巻きと左巻きの定義が、見る人(視点はらせんのどちらかの先に置くのがわかりやすい)から遠ざかる方にらせん上の点を動かしたときに時計回りに動くのが右巻きとされ(15ページ)、そうすると読んでいて時々混乱しつつも落ち着いて考えれば右巻きと左巻きが決まることがわかります。エスカルゴの殻は右巻きが圧倒的多数で左巻きは2万分の1だそうです(28~29ページ)。なお、さいころでは1、2、3はその3面が見えるときは左回り(反時計回り)に1、2、3と並ぶそうです(143~144ページ)。
 豊富な写真入りでトリビアを仕入れる本と思って読むのがたぶん正解の本です。


原題:Rechts oder links - in der Natur und anderswo
ヘンリ・ブルンナー 訳:柳井浩
丸善出版 2013年10月20日発行 (原書は1999年)
コメント
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