人間関係の理解と構築、問題解決を志向した「臨床社会心理学」の入門書(まえがき)と自己規定して、心理学的な観点から見た人間関係の基本と人間関係への不適応及びそれに対する臨床対応や援助などを説明した本。
私としては、対人援助職(教師、医師、看護師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなど)のバーンアウト(燃え尽き)(77~82ページ)の話は強い興味を持ちました。サービスの守備範囲が広くクライエントの要求にはきりがないという気持ちを持ちやすくサービスの提供はこれで十分という基準があるわけでもない…う~ん、身につまされるというか共感するというか。また、相談場面での心がけなどについて書かれた第6章も参考になります。かつて日弁連法律相談センターで心理・臨床の人々とともに面接技法研究会というのをやっていたときにも実感しましたが、心理臨床と法律相談では目的やテクニックは相当程度異なるのですが、同時に人間と相対して相談を受ける/行うという点では共通のもので、自分の対応の懐を拡げるためにも頭には置いておきたいところです。人間関係の不適応(引きこもりとかいじめ、虐待)についての第5章は興味深く読めましたし、精神科クリニックに勤めながらスクールカウンセラーとして派遣された「ある若手の心理臨床家」がクリニックモデルでは学校現場のニーズに応えられず戸惑ったという話(189~190ページ)は個人開業している弁護士(私のような)が組織に雇われたら同じようなものだろうなと考え込みました。
心理学系の本に(社会学系の本にも)ありがちですが、日常生活用語と異なる業界用語で内容的にはある種ごくふつうの当たり前と思えるようなことを書き、しかもその論の根拠として多くの場合、研究者の名前を挙げて○○はこう言っているというだけだったりするのが、読んでいてだからどうしたと思いますし、眠気を呼びました。例えば「子ども時代に虐待を受けた経験のある親が自分自身の子どもに対して虐待を繰り返すリスクが高いという現象を虐待の世代間伝達(transgenerationel transmission)という。」(116ページ)って、今どき「虐待の連鎖」で一般人に通じると思いますが、あえて堅苦しく言いたいのかなって思います。そして論の根拠として「○○はこう言っている」と引用しているのが執筆者自身の論文だったりすることがありますが、ほとんどの場合その引用されている論文が執筆者自身の論文であることは本文を読んでもわかりません。1人で書いている本なら著者が明示されていますからいちいち言わなくてもわかりますが、この本は執筆者が細かく分かれていて各章・各節ごとには執筆者の記載がなく執筆者名は末尾の一覧に書かれているだけなので、気にかけて執筆者と引用文献を対照しないとそれがわかりません。私は、そういうの執筆姿勢としてアンフェアだと思いますし、少なくとも一般読者に親切な本ではないと思います。

上野徳美、岡本祐子、相川充編著 北大路書房 2013年9月20日発行
私としては、対人援助職(教師、医師、看護師、カウンセラー、ソーシャルワーカーなど)のバーンアウト(燃え尽き)(77~82ページ)の話は強い興味を持ちました。サービスの守備範囲が広くクライエントの要求にはきりがないという気持ちを持ちやすくサービスの提供はこれで十分という基準があるわけでもない…う~ん、身につまされるというか共感するというか。また、相談場面での心がけなどについて書かれた第6章も参考になります。かつて日弁連法律相談センターで心理・臨床の人々とともに面接技法研究会というのをやっていたときにも実感しましたが、心理臨床と法律相談では目的やテクニックは相当程度異なるのですが、同時に人間と相対して相談を受ける/行うという点では共通のもので、自分の対応の懐を拡げるためにも頭には置いておきたいところです。人間関係の不適応(引きこもりとかいじめ、虐待)についての第5章は興味深く読めましたし、精神科クリニックに勤めながらスクールカウンセラーとして派遣された「ある若手の心理臨床家」がクリニックモデルでは学校現場のニーズに応えられず戸惑ったという話(189~190ページ)は個人開業している弁護士(私のような)が組織に雇われたら同じようなものだろうなと考え込みました。
心理学系の本に(社会学系の本にも)ありがちですが、日常生活用語と異なる業界用語で内容的にはある種ごくふつうの当たり前と思えるようなことを書き、しかもその論の根拠として多くの場合、研究者の名前を挙げて○○はこう言っているというだけだったりするのが、読んでいてだからどうしたと思いますし、眠気を呼びました。例えば「子ども時代に虐待を受けた経験のある親が自分自身の子どもに対して虐待を繰り返すリスクが高いという現象を虐待の世代間伝達(transgenerationel transmission)という。」(116ページ)って、今どき「虐待の連鎖」で一般人に通じると思いますが、あえて堅苦しく言いたいのかなって思います。そして論の根拠として「○○はこう言っている」と引用しているのが執筆者自身の論文だったりすることがありますが、ほとんどの場合その引用されている論文が執筆者自身の論文であることは本文を読んでもわかりません。1人で書いている本なら著者が明示されていますからいちいち言わなくてもわかりますが、この本は執筆者が細かく分かれていて各章・各節ごとには執筆者の記載がなく執筆者名は末尾の一覧に書かれているだけなので、気にかけて執筆者と引用文献を対照しないとそれがわかりません。私は、そういうの執筆姿勢としてアンフェアだと思いますし、少なくとも一般読者に親切な本ではないと思います。

上野徳美、岡本祐子、相川充編著 北大路書房 2013年9月20日発行