デザイン事務所に勤める35歳独身の悠木仁絵と親のレストランを引き継いで調理師になった幼なじみの駒場雄大のお互いにジコチュウの恋人に振り回されてから恋に臆病になった後の思い、仁絵の友人たちで初の海外での個展が決まった田河珠子の既に追い越してしまった感のある男との恋の亀裂、編集者の長谷鹿ノ子の不倫の恋とその相手の入院、そして登場人物が様々な生活の場面で聞いているラジオ番組のパーソナリティ竜胆美帆子の夫との関係を絡ませていく恋愛小説。
主人公の仁絵の語りで、子どもの頃からのばかげたことを知り尽くしている幼なじみと結婚できるか、ときめき見つめ合った初期がない相手と「生活」をやっていけるか、さらにはそういう相手に欲情できるかということが問われています。勢いとかタイミングの問題はあるでしょうけど、好きになったらばかげたこともただ微笑ましい想い出になっていくと思いますし、安心感と欲情は矛盾しないと思いますけどね。
不倫相手の入院で改めて相手との関係、妻との関係を問い直し感情を整理していく鹿ノ子の思いもなかなかに切ない。
そういう好きな相手を思う心情をそれぞれのシチュエーションで考え味わってちょっと切なかったり暖かく思ったりするタイプの作品です。設定が20代じゃなくて30代半ばというのが、そうするともう少し上の年齢にも考えを及ぼしやすくて、おじさん読者にはありがたく思えました。
角田光代 文春文庫 2012年5月10日発行
主人公の仁絵の語りで、子どもの頃からのばかげたことを知り尽くしている幼なじみと結婚できるか、ときめき見つめ合った初期がない相手と「生活」をやっていけるか、さらにはそういう相手に欲情できるかということが問われています。勢いとかタイミングの問題はあるでしょうけど、好きになったらばかげたこともただ微笑ましい想い出になっていくと思いますし、安心感と欲情は矛盾しないと思いますけどね。
不倫相手の入院で改めて相手との関係、妻との関係を問い直し感情を整理していく鹿ノ子の思いもなかなかに切ない。
そういう好きな相手を思う心情をそれぞれのシチュエーションで考え味わってちょっと切なかったり暖かく思ったりするタイプの作品です。設定が20代じゃなくて30代半ばというのが、そうするともう少し上の年齢にも考えを及ぼしやすくて、おじさん読者にはありがたく思えました。
角田光代 文春文庫 2012年5月10日発行