北海道南西沖地震で家族を失った奥尻島の民宿の娘で小学4年生9才の竹中花が、親戚の海上保安官の独身25才の青年腐野淳悟に引き取られて養子縁組して紋別で2人暮らしを始め、淳悟の恋人の大塩小町、町内の顔役の大塩のおじいさん、都会で失敗して帰ってきた警察官田岡や小学校の同級生章子、暁らと微妙な距離を保ち、東京へと移り住んで小町や勤務先のそつのない育ちのよい青年尾崎美郎らとかかわりながら、おとうさんとの2人の秘密を持って生きていく様子を描いた小説。
濃く暗いどろどろした関係を描いているのですが、文体がどこか乾いたさらさら感があって軽く読ませてしまう。ストーリーが花が24才の第1章に始まり、9才の第6章まで順番に遡っていく形態で、きれいにつなぐのがけっこう難しいやり方だと思うのですが、破綻なく興味を維持して読めました。そのあたり、巧さが感じられます。破綻なくと言っても、8年間放置したカメラで撮影できるか(ストロボが光るか)とか、死体が何年も腐らずに隣人に気づかれないかとか、ファンタジーとして読むべきかと思うところも少なからず見られますけど。
第三者の目からは児童に対する性的虐待としか評価できない設定を、少女側が望み愛情を持ち欲情し積極的に維持していると表現することは、人間関係はケース・バイ・ケースでそういう思いがあり得ないではないにせよ、問題提起でありタブーへの挑戦であるとしても、当惑を禁じ得ません。特に大潮のおじいさんが秘密を明かす第4章になると、いくらなんでもおいおい…と思います。考えさせられるというよりも、こういうファンタジー的な物語を読んで少女側でも望んでいるとかいやよいやよも好きのうち的な独りよがりの妄想を膨らませて行く児童虐待者たちが出てこないかと心配してしまいます。
桜庭一樹 文藝春秋 2007年10月30日発行
直木賞受賞作
濃く暗いどろどろした関係を描いているのですが、文体がどこか乾いたさらさら感があって軽く読ませてしまう。ストーリーが花が24才の第1章に始まり、9才の第6章まで順番に遡っていく形態で、きれいにつなぐのがけっこう難しいやり方だと思うのですが、破綻なく興味を維持して読めました。そのあたり、巧さが感じられます。破綻なくと言っても、8年間放置したカメラで撮影できるか(ストロボが光るか)とか、死体が何年も腐らずに隣人に気づかれないかとか、ファンタジーとして読むべきかと思うところも少なからず見られますけど。
第三者の目からは児童に対する性的虐待としか評価できない設定を、少女側が望み愛情を持ち欲情し積極的に維持していると表現することは、人間関係はケース・バイ・ケースでそういう思いがあり得ないではないにせよ、問題提起でありタブーへの挑戦であるとしても、当惑を禁じ得ません。特に大潮のおじいさんが秘密を明かす第4章になると、いくらなんでもおいおい…と思います。考えさせられるというよりも、こういうファンタジー的な物語を読んで少女側でも望んでいるとかいやよいやよも好きのうち的な独りよがりの妄想を膨らませて行く児童虐待者たちが出てこないかと心配してしまいます。
桜庭一樹 文藝春秋 2007年10月30日発行
直木賞受賞作