伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ふたりぐらし

2020-09-29 01:44:40 | 小説
 定収がなく脚本を書いて応募するが採用されずにいる元映画技師の信好と35歳の看護師紗弓の夫婦の日常、親との付き合い、仕事上のできごとなどを描いた短編連作。
 赤貧というはどではないものの、定収入がなく妻に食わしてもらっていることを引け目に感じ、発泡酒を1日に2本とは贅沢なと思い、老いた母にへそくりで鰻をおごってもらったことを後ろめたく思い妻には言えない信好と、貧しさの中で慎ましく暮らしながらもささやかな幸せを見いだし夫の周囲にいる特に男女関係にあるわけでもない女の存在に嫉妬を露わにしつつけなげに夫に愛情を寄せる紗弓の姿は、微笑ましく切ない。信好の隠し事や紗弓の嫉妬が、互いに相手に悪いという思いに通じ、結局は相手に対する愛情を深めいたわりに向かうというあたりが、しみじみといいなぁと思います。
 先行きの見えない時代にあって、自分自身ももう高齢者と呼ばれる歳になってきた零細自営業者なので、貧しさに圧迫され将来に不安を持つ信好と紗弓の暮らしぶりは、他人事には見えませんが、その中でも仲睦まじく生きる2人の姿には、力づけられます。
 久しぶりに、いいものを読ませてもらったなと思いました。


桜木紫乃 新潮社 2018年7月30日発行
コメント
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