ラジオの深夜番組のパーソナリティも担当している42歳のスタイリストの三崎帆奈美が、大女優水原瑶子の撮影で中学のとき同級生だった「カメラマン」(フリーランスの女性を主人公にした小説で、今どき珍しいお言葉。作者のか、「婦人公論」のメンタリティか…)澤田炯とともに仕事をしたのを機に、水原瑶子に気に入られて澤田とともに様々な仕事にチームとして呼ばれるようになり、夫との諍い、夫の浮気の発覚を経て、言い寄る澤田と関係を持ちという不倫・離婚・再出発小説。
主人公の不倫を正当化するのに、仕事に理解のない夫の傲慢な言い草、夫を甘やかす義母との確執、夫に対して自分が譲ることへの不満の鬱積、夫の浮気の発覚、男からの強引な誘いと積み重ね、自分勝手な夫と思いやりがあり自分に理解を示す男との対比をして見せるというのが、読者への配慮というか、読者のニーズなのでしょう。同性のというか、私の目には、夫から愛人との間に子どもができたというメールが来て動揺している帆奈美を、それも高熱を出していることを知り心配してホテルの部屋に訪ねて来たところを、強引に押し倒す澤田は、ずいぶんと小ずるい卑怯な男に見えますし、その澤田が思いを遂げた後の別の機会に拒否されてその日は諦めるという際に「俺が、大人でよかったね」なんていう(289ページ)のは笑えますし、この人物の独りよがり(勘違い)ぶりを示唆していて、いやこの先に暗雲が垂れ込めているようにさえ見えるのですが、そっちはこの際目をつぶるというかまぁいいやってことなんでしょうかね。
村山由佳 中央公論新社 2018年7月10日発行
「婦人公論」連載
主人公の不倫を正当化するのに、仕事に理解のない夫の傲慢な言い草、夫を甘やかす義母との確執、夫に対して自分が譲ることへの不満の鬱積、夫の浮気の発覚、男からの強引な誘いと積み重ね、自分勝手な夫と思いやりがあり自分に理解を示す男との対比をして見せるというのが、読者への配慮というか、読者のニーズなのでしょう。同性のというか、私の目には、夫から愛人との間に子どもができたというメールが来て動揺している帆奈美を、それも高熱を出していることを知り心配してホテルの部屋に訪ねて来たところを、強引に押し倒す澤田は、ずいぶんと小ずるい卑怯な男に見えますし、その澤田が思いを遂げた後の別の機会に拒否されてその日は諦めるという際に「俺が、大人でよかったね」なんていう(289ページ)のは笑えますし、この人物の独りよがり(勘違い)ぶりを示唆していて、いやこの先に暗雲が垂れ込めているようにさえ見えるのですが、そっちはこの際目をつぶるというかまぁいいやってことなんでしょうかね。
村山由佳 中央公論新社 2018年7月10日発行
「婦人公論」連載