ソーシャルメディアを使って活動する300のフェミニズム・グループの観察を中心として、第4派フェミニズムと言われる運動を分析した著者の博士論文をベースに、その後のコロナ禍の下での状況を付け加えて論じた本。
SNSでの個人の発信が身近な具体的な体験を知り共感する契機となること、短期間に拡散されて大きなムーブメントとなり得ることが、オンラインメディアを用いた運動の、良かれ悪しかれ特徴となります。大きな波となる期待と、様々な利害と意見の相違・対立と分断の芽を常に内包することをどう捉え、乗り切っていくか。この本でも、それぞれのグループ、運動の差異、それぞれの主張の尊重を前面において紹介する第4章と、違いを乗り越え(そこに目を向けず)大きな運動となった「ウィメンズ・マーチ」を紹介する第5章の肌合いというか論調の違いに、それが表れているように思えます。
少数派の主張と存在を無視せず抑え込まず、しかし行動すべき時にはあるいは対外的には非難ではなく連帯を、というのが穏当な回答でしょうけれども、SNSの世界ではそれもまた難しいのが実情で、悩ましくも哀しいところと感じます。
井口裕紀子 人文書院 2022年11月30日発行
SNSでの個人の発信が身近な具体的な体験を知り共感する契機となること、短期間に拡散されて大きなムーブメントとなり得ることが、オンラインメディアを用いた運動の、良かれ悪しかれ特徴となります。大きな波となる期待と、様々な利害と意見の相違・対立と分断の芽を常に内包することをどう捉え、乗り切っていくか。この本でも、それぞれのグループ、運動の差異、それぞれの主張の尊重を前面において紹介する第4章と、違いを乗り越え(そこに目を向けず)大きな運動となった「ウィメンズ・マーチ」を紹介する第5章の肌合いというか論調の違いに、それが表れているように思えます。
少数派の主張と存在を無視せず抑え込まず、しかし行動すべき時にはあるいは対外的には非難ではなく連帯を、というのが穏当な回答でしょうけれども、SNSの世界ではそれもまた難しいのが実情で、悩ましくも哀しいところと感じます。
井口裕紀子 人文書院 2022年11月30日発行