日本経済がバブル崩壊後30年余の間ほぼ0成長で賃金が下がる一方となった「失われた30年」の原因は、日本の企業の多くがグローバル化・IT化という世界の潮流を見誤り輸出競争力を大きく低下させた上、他の先進国のように輸出主導から消費主導へと転換することができなかったことにあり、日本で国内消費が拡大しない原因は日本社会の不寛容で抑圧的な風潮が個人消費を抑制していることにあるのではないかと論じた本。
第1章ではさまざまな国際比較を行い、日本社会での人々の意識の特殊性を論じています。つまみ食い感はあるもののまぁそうだろうなと思えますし、このあたりは軽快に読めます。今声高に叫ばれている「自己責任論」が、経済活動における本来の自己責任とは別物のただ弱者に対するバッシングを行うための道具にすぎず、こういった歪んだマインドはむしろ健全な市場メカニズムを阻害するなどのコメント(44ページ)は、タイトルに似つかわしいものです。ここで紹介されている中で16歳から24歳までの若者が職場や家庭でパソコンを使用する頻度がOECD加盟国で最低水準(50~52ページ。51ページの図はわかりやすく見せていますが、単位がなく、平均が2で標準偏差が1となるように調整した数値だということを説明しておいて欲しいところです)というのがショッキングでした。日本の若者はスマホしか使えずパソコンを持っていない…他の国もそうかと思っていたけれど他国ではスマホに加えてパソコンやタブレットを使っているというのに。この調査は2013年のものですでに10年前ですが、この格差は今はもっと拡がっているのでしょうね。
さて、タイトルと第1章は興味深いこの本ですが、第2章以降は、他人の足を引っ張る日本人の特徴的なマインドの原因は日本社会の前近代的な性格にあるとして、倫理・社会などでおなじみの「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」などの議論を続け、過去の政策の失敗等の事例の説明が繰り返されます。そこが論証だよということかもしれませんが、提言も近代化ができていないことが原因ということから近代化(自由の保障・尊重)しようというものにとどまり、タイトルが刺激的なだけに、それだけ?と思ってしまいます。
日本人の消費拡大を阻害している原因を議論するのに、(租税・社会保険料が高負担なのに)社会保障が脆弱で老後や障害を負ったときなどの生活が保障されておらず、国民が安心できていないという問題について、生活保護受給者が白い目で見られる上申請者を追い返したり親族への扶養照会(先進諸国ではほとんど行われていないことは指摘されています)などで行政が生活保護を申請できないように仕向けていること(42~43ページ)以外には言及されていないことは、ちょっと不思議です。
加谷珪一 幻冬舎新書 2022年1月25日発行
第1章ではさまざまな国際比較を行い、日本社会での人々の意識の特殊性を論じています。つまみ食い感はあるもののまぁそうだろうなと思えますし、このあたりは軽快に読めます。今声高に叫ばれている「自己責任論」が、経済活動における本来の自己責任とは別物のただ弱者に対するバッシングを行うための道具にすぎず、こういった歪んだマインドはむしろ健全な市場メカニズムを阻害するなどのコメント(44ページ)は、タイトルに似つかわしいものです。ここで紹介されている中で16歳から24歳までの若者が職場や家庭でパソコンを使用する頻度がOECD加盟国で最低水準(50~52ページ。51ページの図はわかりやすく見せていますが、単位がなく、平均が2で標準偏差が1となるように調整した数値だということを説明しておいて欲しいところです)というのがショッキングでした。日本の若者はスマホしか使えずパソコンを持っていない…他の国もそうかと思っていたけれど他国ではスマホに加えてパソコンやタブレットを使っているというのに。この調査は2013年のものですでに10年前ですが、この格差は今はもっと拡がっているのでしょうね。
さて、タイトルと第1章は興味深いこの本ですが、第2章以降は、他人の足を引っ張る日本人の特徴的なマインドの原因は日本社会の前近代的な性格にあるとして、倫理・社会などでおなじみの「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」などの議論を続け、過去の政策の失敗等の事例の説明が繰り返されます。そこが論証だよということかもしれませんが、提言も近代化ができていないことが原因ということから近代化(自由の保障・尊重)しようというものにとどまり、タイトルが刺激的なだけに、それだけ?と思ってしまいます。
日本人の消費拡大を阻害している原因を議論するのに、(租税・社会保険料が高負担なのに)社会保障が脆弱で老後や障害を負ったときなどの生活が保障されておらず、国民が安心できていないという問題について、生活保護受給者が白い目で見られる上申請者を追い返したり親族への扶養照会(先進諸国ではほとんど行われていないことは指摘されています)などで行政が生活保護を申請できないように仕向けていること(42~43ページ)以外には言及されていないことは、ちょっと不思議です。
加谷珪一 幻冬舎新書 2022年1月25日発行