伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

黒牢城

2023-04-28 00:17:55 | 小説
 天正6年(1578年)11月から9か月間、織田信長勢に囲まれて伊丹有岡城で籠城を続ける荒木摂津守村重が、籠城中に逢着した難題、織田に寝返った安部二右衛門の子自念を殺さずにいたのに何者かに矢で殺されたが矢が見つからない半密室殺人、夜討ちに出て敵の大将を仕留めたものの誰の手柄か判別できない、密使として書状と貴重な茶壺を託した僧が御前衆4名が警護する中で御前衆の手練れ1名とともに殺害されたというやはり半密室的殺人、村重がその犯人と名指した者を何者かが鉄砲で撃った(ただし外した)事件について、調査しても真相がわからず、困り果てた村重が地下牢に捕らえていた黒田官兵衛を訪れ知恵を借りて謎を解き対処して行くという体裁の時代物ミステリー連作小説。
 町自体を囲う巨大な惣構えの大城塞の有岡城は天下の堅城として知られていたが、村重は、城が堅いのは堀が深く城塁が高いからではなくそこに籠もる将卒が城の不落を信じるから、将卒が大将の器量を疑う城はいかに掘り深くとも容易く落ちる、有岡城が真に堅城たり得るかはひとえに将卒の意気にかかっていると考え(7ページ、27ページ、85ページ)、大将への疑念・不信を招き結束を乱しかねないこれらの謎を解かねばならないというのが、この作品の肝となっています。
 そこから、籠城中の荒木方の村重と家臣らの思惑と人間関係、特に信頼関係、忠誠心が重視され、それに関わる村重の読みと苦悩が書き込まれています。村重と家臣、城内に住む民らの士気、関係の変化、次第に荒木方が焦れ追い込まれていく様子の描写が、ミステリー部分よりも読みどころに思えました。


米澤穂信 株式会社KADOKAWA 2021年6月2日発行
「文芸カドカワ」「カドブンノベル」連載
直木賞受賞作、山田風太郎賞受賞作
『このミステリーがすごい! 2022年版』(宝島社)国内編第1位
週刊文春ミステリーベスト10(週刊文春2021年12月9日号)国内部門第1位
「ミステリが読みたい! 2022年版」(ハヤカワミステリマガジン2022年1月号)国内篇第1位
『2022本格ミステリ・ベスト10』(原書房)国内ランキング第1位
「2021年歴史・時代小説ベスト3」(週刊朝日2022年1月14日号)第1位
だそうな
コメント
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