両親に早く死なれ姉が隠れて売春をしながら学費を出してくれて検事になれたが、その姉が売春の過去を知った夫の暴力を受けて病院で植物状態になっているという負い目を持ち続ける津田口亮介が、同棲していたヒモの男君塚公平をナイフで刺して殺害し部屋に火を放ったという容疑で逮捕されて取調を受けているホステス池松律子を担当し、姉と声が似ている律子に翻弄されながら、律子の露悪的な虚勢と事件の真相に疑問を持ち、のめり込んでいくという展開のミステリー小説。
津田口検事や周囲の者の視点からの語りが入れ替わりで続き、最後まで律子の語りはなく、律子の本音や人柄、そして事件の真相はそこから推測して行くという形になります。ラストの語りも、事件の真相なのか視点者の主観・願望なのか(もっとも、視点者が知り得ないことも書かれているのですが)、読者の読み方によることになります。
幼くして負ったさまざまな不幸と、幼なじみの友情・愛情・嫉妬、律子をめぐる男たちの感情・心情と律子が見せるさまざまな側面が、切ない。
裁判ものとしては、姉の夫が心神喪失が認められ無罪(168ページ)というのは、それらしいディテールの描写もなく唐突感があって、底の浅さを感じ、残念な気がしました。
竹田新 幻冬舎文庫 2021年4月10日発行
津田口検事や周囲の者の視点からの語りが入れ替わりで続き、最後まで律子の語りはなく、律子の本音や人柄、そして事件の真相はそこから推測して行くという形になります。ラストの語りも、事件の真相なのか視点者の主観・願望なのか(もっとも、視点者が知り得ないことも書かれているのですが)、読者の読み方によることになります。
幼くして負ったさまざまな不幸と、幼なじみの友情・愛情・嫉妬、律子をめぐる男たちの感情・心情と律子が見せるさまざまな側面が、切ない。
裁判ものとしては、姉の夫が心神喪失が認められ無罪(168ページ)というのは、それらしいディテールの描写もなく唐突感があって、底の浅さを感じ、残念な気がしました。
竹田新 幻冬舎文庫 2021年4月10日発行