伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

さよならごはんを今夜も君と

2024-01-12 22:22:02 | 小説
 幼い頃色鮮やかで華やかで美しいが冷え切った料理を一人黙々と食べていた過去を持つ料理人朝日が営む高架下の小さな「お夜食処あさひ」の前で佇んでいた、不本意な高校に通いながら勉強漬けの毎日を過ごす神谷小春、太っていることを気に病み無理なダイエットを続ける中学生の青木若葉、母親の手作りのオーガニック料理に飽きてジャンクフードに憧れる小学生の凌真、ほったらかし続けた飼い犬が死んで突然に罪悪感に駆られてものが食べられなくなった19歳の大学生笹森に、朝日がただで料理を振る舞い、頑なな心をほどいて行くという若者向けヒューマンドラマ系の小説。
 いずれも視野が狭くジコチュウでわがままでありながらも、内心では自分の方が悪いと認識している者たちが、朝日とその料理を媒介に自分に素直になっていくという展開で、するりと入りやすいお話です。他方で登場人物の言い分のいかにもの子どもっぽさとか、朝日が学生は100円とかただで食べ放題とかにする設定の童話っぽさなど、入りきれないあるいはどこか物足りないという印象も持ちました。
 朝日の容貌については、「男性にしては少し長めの髪を、頭の後ろで無造作に束ねている」(34ページ)とされてるのですが、表紙のイラストは髪を束ねていないし、束ねることが不可能とまでは言えないものの束ねようと思う長さには見えません。そこも少し違和感がありました。


汐見夏衛 幻冬舎文庫 2023年8月5日発行
コメント
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