Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

中桐雅夫「死者の軍隊」

2016年08月29日 22時43分55秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
死者の軍隊     中桐雅夫

俺は病人 俺のなかで
二つの世界が戦つている
俺の肉はシャベルで彫りかえされ
俺の骨はドリルで穴をあけられる

俺は病人 俺のなかで
祖先と相続人が対峙している
塵埃でできた俺のからだが
いつまでその緊張に堪えていられよう

二つの軍隊は
夜も眠らず 行進し 偵察する
俺の血と汗は
彼らの手旗信号に従つて流れる

俺は病人 俺のなかで
二つの世界が戦つている
俺の心臓は結滞し
肺は炎症を起している

俺は病人 俺のなかで
憎悪と愛が対峙している
彼らは俺の神経のはしばしに火をつけ
俺の血を燃えつきさす

この死者の軍隊
俺の骨と肉を舞台として
攻撃し 反撃する
この二つの 慈悲なき軍隊!



 この詩は「荒地詩集1954」に収録されている。中桐雅夫35歳の詩である。1954年という時代、前年に朝鮮戦争が終結したが、その影響は大きかった。さらに東西冷戦か緊張を高めている時である。
 1945年の終戦以降9年という時間を経ているが、緊張の続く世界情勢の中で、戦争の傷跡、その後の世界の緊張が「戦争」「軍隊」という言葉が詩人の頭の中で、思考するたびに湧き上がり、思考を中断し、戦争体験を呼び覚ます。これは多分の多くの国民に作用していたと思われる。ベトナム戦争に従軍させられた多くの米兵がその後の日常生活にその体験を引きづったように。あるいは旧大日本帝国の軍隊で視線を彷徨った日本人はさらに厳しく尾を引かざるを得なかったはずである。中桐雅夫という先端の知識人もその例外ではなかったはずである。戦争体験からの脱却は9年たっても執拗についてくる。そして世界の緊張関係がさらに個人の緊張を増幅する。
 この詩を昔目にした時、分かりづらく理解できなかった。今もわからない。肉と骨、祖先と相続人、二つの軍隊、二つの世界、憎悪と愛、死者の軍隊、慈悲なき軍隊‥具体的荷イメージとして把握できない。二つの世界が一般的に東西冷戦の脾兪とは思えない。戦後の生活の中で、詩人の観念そのものが二項対立的に分裂しているのであろうか。そういってしまっても何かを言い当てたとはいえない。
 判るのは軍隊に引きづられて血と汗を流させられた体験が9年たっても抜けきらないという体験の重みである。そしてそれからどのように再生しようともがいたか、そんな苦闘をさらに詩人がたどった道を追ってみたいという欲求を私にもたらす力が漂ってくる。

 この詩を初めて読んた1986年8月からちょうど30年たった。今でもわからないままである。しかし戦争を引きずった詩人が何を伝えたかったか、考えさせられた30年でもある。
 私の読解力の無さをさらけだすようだが、わからないまま取り上げてみた。


本日の台風10号(08.29)

2016年08月29日 19時43分01秒 | 天気と自然災害
   

 横浜でも先ほど少し強めに雨が降った。今は止んでいるが、これから断続的に雨が降り続くと予想されている。
 台風10号の動きはとても気になっている。中心気圧が低く高潮被害が予想されているだけでなく、その上に今は大潮、そして台風が最接近するころは満潮、さらに宮城から岩手にかけては台風に吹き込む強い東風で高波が寄せると予想される。
 高潮・大潮・満潮・高波が予想されるということは、海岸での防波堤をのり越える波が予想されるということである。岩手のリアス式海岸ではさらに波が高くなる。大震災での地盤沈下個所、海岸の工事の未完成個所など要注意である。
 予想進路では上陸しそうな個所は仙台から石巻にかけて地域を中心としているが、その後の進路が少し変わったようだ。これまでは東北地方を東から西に横断するような予想だったが、上陸後北寄りのコースを進み、北海道の西部にむかいそうである。
 また湿った強い東風が北上山地、奥羽山脈にぶつかれば、大量の雨が予想される。特に太平洋に流れ込む北上山地と奥羽山脈に発する河川は短いが川幅は狭いので大量の雨を処理しきれずに氾濫する可能性は高い。それは出羽山地でも同じことが云えるので、最上川・北上川の流域は要注意のはずである。


★平成28年 台風第10号に関する情報 第93号
平成28年8月29日17時20分 気象庁予報部発表
強い台風第10号は30日には東北地方に接近し、上陸するおそれがあります。東北地方を中心に、海上では猛烈な風が吹き、海は猛烈なしけとなり、猛烈な雨が降る見込みです。暴風や高波、低い土地の浸水、河川の増水やはん濫、土砂災害、高潮に厳重に警戒してください。
[台風の現況と予想]
 強い台風第10号は、29日15時には八丈島の東南東の海上を、1時間におよそ25キロの速さで北東へ進んでいます。中心の気圧は950ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートル、最大瞬間風速は60メートルで、中心から半径110キロ以内では、風速25メートル以上の暴風となっています。
台風第10号は、29日夜にかけて伊豆諸島の東海上を北上し、30日は次第に温帯低気圧の性質を帯びつつ進路を北北西に変え、北日本や関東地方に接近する見込みです。30日夕方から夜には、強い勢力で暴風域を伴ったまま東北地方に上陸するおそれがあり、31日には日本海に進むでしょう。
[防災事項]
<暴風・高波> 東日本太平洋側の海上では、うねりを伴い大しけとなっています。台風の接近に伴い、30日は風が急に強まり、北日本では猛烈な風が吹き、海は猛烈なしけとなる見込みです。東日本でも、非常に強い風が吹き、海は大しけとなるでしょう。
30日にかけて予想される最大風速(最大瞬間風速)は、
 東北地方  35m(50m)     北海道地  30m(45m)
 関東地方  23m(35m)     北陸地方  20m(30m)
 東海地方  18m(30m)
30日にかけて予想される波の高さは、
 東北地方 10m    東海地方 6m    北海道地方、関東甲信地方   8m
の見込みです。暴風やうねりを伴った高波に厳重に警戒してください。
<大雨>
北日本や東日本では30日未明から非常に激しい雨が降り、局地的には猛烈な雨の降る所があるでしょう。
30日18時までの24時間に予想される雨量は、いずれも多い所で、
 東北地方 350ミリ     関東甲信地方 200ミリ
 北陸地方、北海道地方 150ミリ
31日18時までの24時間に予想される雨量は、いずれも多い所で、
 東北地方、北海道地方  100から200ミリ
の見込みです。
東北地方では、平年の8月1ヶ月分の降水量を超えるおそれがあり、降水量がかなり多くなるおそれがあります。低い土地の浸水、河川の増水やはん濫、土砂災害に厳重に警戒してください。
また、落雷や竜巻などの激しい突風にも注意してください。発達した積乱雲の近づく兆しがある場合は、建物内に移動するなど、安全確保に努めてください。
<高潮>
 北日本では、台風が接近する30日昼過ぎからは潮位の高くなる所があるでしょう。海岸や河口付近の低地では、高潮による浸水や冠水に厳重に警戒してください。
 
→【http://www.jma.go.jp/jp/kishojoho/000_00_662_20160829082023.html



ブラームス「4つのバラード(作品10)」

2016年08月29日 12時42分05秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
 1854年、ブラームスが21歳の時に書き上げられた曲であるとのことである。4つの曲はそれぞれに性格が違い、起承転結を備えたひとつの曲としてとらえても面白い。また4曲とも静かに消え入るように終わる。これが私の趣味にピッタリである。
 この4曲の中では、第3曲の「インテルメッツォ」のリズムが変わっている。そして一番の好みは第4曲。静かな波のたゆたいのような静かな起伏がどこまでも続く。
 昼間に蝉の声をバックにしながら聴くのは厳しい。静かな秋の夜に聴かないと台無しな曲である。本日も窓を閉め切ってクーラーや扇風機をかけずに聴いている。そうしないとひとつひとつの音が聴こえてこない。
 夜になったらまた聴きたいものである。聴く時間を間違ってしまったと思う。

 曲を聴いてからどんな音型なのか、楽譜を見るのは楽しい。今回も第4曲は細部はまったくだめだったが、おおよその処だけは想像できた。しかし第3曲はまったく想像できなかった。外れたとしてもそれもまた楽しい。