


「ポンピドゥー・センター傑作選」展は、1906年から1977年まで、一年一作品という構成である。1906年は日本史でいえば日露戦争の翌年で、日本が軍事国家としてアジアへ露骨な侵略を始める頃である。私の脳内にあるの世界史と日本史の乏しい知識をフル動員しながらの鑑賞は面白かった。
また既存の作品の年代ごとの再認識はいい勉強になった。作品の前後関係を間違って記憶している物もあった。特に絵画作品と写真作品の時代の誤った記憶が多かった。
展示目録ではなく、実際の作品を見ながら時代を追うというのはいい経験となった。特に1945年以前については‥。
1945年については展示スペースはあるものの壁は黒く塗られ、天井の小さなスピーカーから、レジスタンスのシンボルとも云われたエディット・ピアフの「ラ・ヴィ・アン・ローズ(バラ色の人生)」が流れていた。いかにもフランスらしい演出なのかな、と思った。
戦後、1960年代までの作品は日頃接する機会もあり、私自身との同時代性もあり、親近感のあるものが多かった。しかし1970年代以降の動向については私なりの作品世界と時代の特徴がうまく合致しなかったと思う。1970年以降のフランスや世界の時代相と日本の時代相、わたしなりに整理できていると思ったが、フランス芸術という視点から見た世界の時代相と、日本という狭い視野から覗いてきた世界の時代相とのギャップなのかもしれない。また私なりの時代の評価とズレがあるのかもしれないと思った。そのズレがどういうものなのか、これだけの展示とそれに対する違和感とからは何とも具体的に指摘はできない。感覚的にもうまく表現できない。
私の目に留まった作品は次のとおり
★1907年 ジョルジュ・ブラック「レック湾」

★1909年 モーリス・ヴラマンク「川岸」

★1915年 アルベール・グレーズ「戦争の歌」
この画家の名と作品は初めて目にした。むろん「戦争」とはヨーロッパでの第一次世界大戦である。

★1935年 パブロ・ピカソ「ミューズ」

★1948年 アンリ・マティス「大きな赤い室内」

★1949年 ニコラ・ド・スタール「コンポジション」
この画家と作品も私は初めて見た。前年のマティスの大作「大きな赤い室内」と並んで展示されると、この対照的な色彩がとても映えて見えた。マティスと対照的な色彩感覚にとても惹かれた。また他の作品も見たいと思った。

以下は展示目録

