登場人物30数名。この小説だけは冒頭の主な登場人物名を何度読み返したことか。
事件が新聞記事になるまでのプロセスが本当によく分かり、今更ながら記者たちの苦労に頭が下がります。社会部が中心なのだが、記事のレイアウトをする整理部にまでその著述が及ぶ。これもたまらない面白さである。
7年前の児童連続誘拐事件によるミスで大いなる社会的責任を取らされた3人のジャーナリスト。同じような事件が現代に再現され . . . 本文を読む
佐藤泰志原作ものとしては前2作に較べ多少明るい。函館の空気は依然どんよりしているが、それでも前向きの希望はかすかに見える。生きているということ、生きるということ、人と関わり合うということ、そのようなことを否が応にも考えてしまう作品だ。
男は普通の生活をしていたと思っていた。普通の人間だと思っていた。子供も生まれ、そんな人生がこの先ずっと続くのだと思っていた。けれど自分の存在が女を徐々に滅入らせて . . . 本文を読む