思いもかけず昔懐かし名優たちが勢ぞろいしていて、その意味でも最近の映画の中でも安心できじっくり鑑賞できる魅力満載の映画でした。特に話のとっかかりがヒッチコックばりの巻き込まれ型でわくわくする。
ポルトガルでたった40年ほど前にこういう政治状態だったとはつゆ知らず、まず相変わらずの不勉強ぶりに自分自身を憐れむほど。
この映画では反体制型のレジスタンス情勢はそれほど深く描かれてはいないが、ブルジョアから過激なレジスタンスが出現するのは世の常。その環境の中、一人の女を取り合う同志という出来事も世の道理であります。
僕がこの作品でストーリー的に感心したのは女が同志の男と肉体関係にありながら心は別にあった(守ってほしかったからとは言っていたが)。そのうち心から欲する男が出てきても、それでも男と目指す道が違うからということで別れてしまう。この辺りは男女の妙を表して面白い。
老教師が乗り移ったかのように本の著者に共感するうち、ラストのラストで実にすばらしいオチをこの映画は見せてくれる。やはり主人公は颯爽としたレジスタンスではなく、妻にも去られ読書だけが楽しみな退屈な高校教師であったのだ。
異国の地から離れるとき「だったら残ればいいのよ」と女に言わせしむる老教師。人生は捨てたものではない。どこからでもスタートはあるのだ。映画とはいえ、実に爽快なラストシーン。不覚にも不思議とどわっと涙が出てきた。秀作です。
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