あの『ミツバチのささやき』のビクトル・エリセの新作が31年ぶりに戻って来た。こんなことってあるだろうか、、。早速、映画館にお出ましだ。
冒頭の「悲しみの王」の館。一人の男が館主に出向かれて娘の捜索を頼まれるシーン。もうそれは緊密感もさることながら、出色のエリセ感覚ほとばしる絵巻物のよう。こんもシーンだけでこの映画を見た甲斐があるというもの。
この作品、31年ぶりということに意味があるようです。映画も20年間突如失踪した男優を追い求め続ける映画監督。そしてそこに自分自身の人生を想うゆったりとした時のかなたを放浪する波間。二人が愛した女、男優の娘、そして未完成の「悲しみの王」の娘が映像にクローズアップされる。
それはエリセの過去作品をたどる旅でもあった。繰り返し出現するアナの名前に、我々観客は『ミツバチのささやき』のアナと思考が混濁する。
31年の歳月を経てもエリセの映画は永遠性を持って今そこに存在する。そして映画は冒頭の「悲しみの王」に戻り、看守と娘は劇的に体面する。アナの崩れて泣く顔に我々は今までのエリセ作品が次々と脳裏に舞うことになる。
エリセ、健在である。何よりもそれが一等嬉しい。至福の3時間。映画だけが持つ独自の宝物。映画ってホント素晴らしい。
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