果物の皮というのは、果肉を保護するものである。
栗の皮は
「何もそこまで・・・」
というくらい厳重である。
一番外のイガイガ、その下の硬い皮、さらに茶色の硬い皮、これを剥いても渋皮がある。
四重にガードしている。
よほど用心深い性格に違いない。
これと対照的なのが桃である。
桃の皮は薄い。
それに果肉が軟らかいから、少し力を加えるとすぐに痛んでしまう。
あまりに無防備である。
果物屋では、クッションでくるんで保護している。まるで、過保護娘である。
桃は、果肉の保護ということを考えているのだろうか。
これらに比べて、バナナはえらい。
バナナの皮は、果肉をちゃんと保護しているが、つるりと剥けやすい。
こんなに皮が剥けやすい果物は他にない。
りんごや柿は、皮を剥くのに果物ナイフが必要だから、バナナの便利さがよくわかる。
「私らは、皮を剥く必要がありません」
という果物がある。
さくらんぼである。
さくらんぼは、皮を剥かずにそのまま食べられる。
同じ小さい果物でも、ぶどうは食べたあと皮を出す必要があるから、さくらんぼの気配りはありがたい。
「いやいや、私らは皮そのものがありません」
という果物がある。
イチゴである。
イチゴは、果肉がむき出しになっている。
さくらんぼには、果実の大きさの割に大きい種があるが、イチゴには種さえない。
正確には、表面の粒粒が種らしいが、誰も種と認識しないで食べている。
皮なし、種なし。
人間に手間をかけさせない究極の果物といっていいかもしれない。
だが、イチゴには、さくらんぼのような種飛ばしという遊びは出来ない。