■「歓楽通り/Rue Des Plaisirs」(2002年・フランス)
監督=パトリス・ルコント
主演=パトリック・ティムシット レティシア・カスタ ヴァンサン・エルバズ
売春宿で生まれ、多くのママに囲まれ、外の世界を知らずに育った男プチ・ルイは、理想の女性を見つけて彼女に尽くすことが夢だった。彼の前に新しく店にやってきたマリオンが現れる。君の世話をしたい。そうして彼は身のまわりから理想の男性を探すことまで世話を焼く。それが彼の愛し方。愛する女性が幸せならばそれでいい。奇妙なれど一途な思い。その気持ちの純粋さで奇妙なお話は完全に昇華されちゃってるけど、とにかくこれは普通じゃない。ディミトリとマリオンが愛しあう隣室で二人を見守るなんて、絶対にできないことだ。
ルコント作品に登場する男たちは普通じゃないヤツばかりだ。「髪結いの亭主」にしても「仕立屋の恋」にしても「タンゴ」にしても、男たちはみんな愛することに偏執的だ。それぞれが”オレの愛し方”を持っている。それらは実に奇妙だが、その一途さ故にみな憎めない存在ばかりだ。それはプチ・ルイもそう。だがプチ・ルイは他の男たちと違う。愛する女に触れても抱こうとはしない。モノにしようとは思わないのだ。さらにディミトリがマリオンにふさわしくないと思っているのに追い払わない。多くの男性鑑賞者はきっとプチ・ルイに感情移入することはできないだろう。彼の愛し方って父性なのか?途中そうも思ったがやはり違う。悲劇的なラスト、劇中のシャンソンの歌詞のように、死を迎えようとする彼女に触れ髪に触れた。プチ・ルイは微笑んでさえいるようだった。オレのところで最期を迎えた・・・それでいいじゃないか・・・オレにはそれで十分。・・・やっぱ僕には理解できんわ。「橋の上の娘」のラストみたいに彼女をきつく抱きしめたりでもすれば、納得できたかもしれないけど。でもこれもひとつの”愛し方”。エンドクレジットをボーッと眺めながらそう思った。
そんな理解しがたい男の物語を、最後までみせてしまうルコントの語り口はさすがだ。それにパトリック・ティムシットはやっぱり上手い。モデル出身のレティシア・カスタの近寄りがたい美しさ。もっと庶民的な容姿の女優ではこの物語には不向きだろうね。
(2004年筆)
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