話題のミステリー小説に挑戦。クラシックを弾きこなす腕はないがこれでも鍵盤弾きのはしくれだし、荘厳な交響曲よりもピアノ曲を好む僕としては、平積みされていたこの本に興味をそそられていた。
「聖夜 School and Music」もそうだったが、どちらの小説も多少なりとも演奏の経験がある人なら引き込まれる要素を持っている。それは演奏場面の描写の緻密さだ。指がうまくまわらないもどかしさや、これ以上ないくらいに演奏できた瞬間の恍惚とも言える快感。クラシックでなくともバンドでもいい。音楽を通じて得られる幸福感や、練習で苦しむときのやりきれなさは、この文章から痛いほど伝わってくるだろう。ピアニストを目指すヒロインのお話だから、スポコンドラマ的にも感じる練習シーンも面白い。全身火傷からリハビリ真っ最中のヒロインが、懸命に立ち向かう姿。クライマックスのコンクール場面は圧巻だ。
そしてわすれちゃいけない。このお話はミステリーである。資産家の孫娘が火災で重傷になり、莫大な金額の相続をめぐる事件に巻き込まれる。相続の条件が明かされてから、険悪な雰囲気になる家族、次々に起こる事件。そんな彼女を救うのはこのシリーズの探偵役であるピアニスト。ちょっと浅見光彦的な人物設定が気にはなるけど、それも必要な要素なのかな。ネタバレになるのですべては書かないが、最後の結末、もう少し早く気づけたような気もするな。でも文章だからこそできたものかとも思えた。これ、映画ではどうなっているのだろう。
んで、読み終わってから数日間ピアノ曲ばっかり聴いてた。この廉価版クラシックBOXにも、「月の光」「ラ・カンパネラ」などなど収められている。やっぱり映画、気になるなぁ。
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