今まで、毎年挑戦しているのにナスの生育がうまくいかなかった。それが今年に限ってじつにスムーズに実をつけてくれたのだった。その理由は分からないが、永田農法を一部導入したせいかもしれない。といっても、特製の液肥を撒いたに過ぎないけれど。ひょっとすると、和宮様のご令嬢が直接植えてくださった偉業のせいかもしれない。
さらには今回、鳥獣除けのネットを初めて利用してみた。カラスは実を盗み、シカは柔らかい葉を食害するからでもある。それがアブラムシへの警告にもつながったのかもしれない。結果的には、次々実を結んだナスはソーメンや冷や麦などの柔らかな具としてわが胃袋に投入された。残念ながら、その画像を残す前にツルっと口に入れ込む食欲第一主義が勝っていた。
ところで、「上越丸えんぴつナス」という旨い伝統野菜が新潟にあるのを知った。「えんぴつ」と言うと細長くて、先がとがっているイメージがあるけど、そのナスを在来の卵形のナスと交配するうちに、上越地区の特産野菜となり「上越丸えんぴつナス」と命名された。
ぷっくりとした丸さに少し先端がとがっているのが特徴。あくが少なく、果肉がとろけるような食感で、煮ても焼いても揚げてもおいしいナスだと評判だ。
この上越地域在来のナスを守ろうと、平成26年に農業者3人で「上越丸えんぴつナス研究会」をつくって、種の保存と広く知ってもらおうと意気旺盛な活動をしている。その少数精鋭の心意気が素晴らしい。確かに、トロっとした甘みがたまらない。たまたまオラの歯が入れ歯直前の状態であるので、その柔らかい食感が気に入った。
新潟県はナスの作付面積が全国一位で、新潟市は一世帯当たりのナスの購入量も全国一位という。収穫量では高知県が一位だが、消費量では新潟は第一位。新潟はナス王国でもある。初夢に見ると縁起が良いとされた「一富士二鷹三なすび」のことわざがあるが、家康はなすびが好物だった。当時、静岡の三保折戸地区で作られた「折戸なす」は、地温が高くなる砂地を利用して旬の早い技術があったという。
明治以降、、その栽培は途絶えていたが、国の研究機関で保存されていた折戸なすの種をもとに生産者と連携して平成17年折戸なすの復活を果たした。現在家康公を祭る「久能山東照宮」に「折戸なす研究会」によって毎年初物の折戸なすが奉納されている。在来の伝統野菜の継続は、こうした心意気あるグループが活躍しているのが心強い。