熱波が連日ミサイルのように襲う。だもんで、日中は昼寝、夕方から動き出すのがパターンとなった。居間は寝床となってしまった。そんなある日の夕方、ススキを畝のまわりに敷くため運搬していたら、野鳥の巣らしきものが転がり出た。ときどき、見かけるのはヒメネズミの小さな巣が多い。今回はそれより大きめだった。
横から見ると、つぼ型に見える。最初は気が付かなくてぞんざいに扱っていたから形は違っていたかもしれない。材料は間違いなくススキの葉を使っている。とすると、ススキ群落でけたたましく泣き叫ぶ「ヨシキリ」の巣かもしれない。ただし、姿はほとんど見かけない。むしろ、ホオジロとかウグイスとかの方が身近かなので、その可能性も否定できない。
中側をのぞいてみると、きわめて緻密に織り込んでいるのがわかる。なにしろ、ここで産卵も子育てもするわけだから親の努力と苦労がしのばれる。巣の形には、①おわん型 ②お皿型 ③球形型 ④トンネル型 ⑤樹洞形型 ⑥つぼ型 ⑦くぼみ型など、自然を利用した巣が多彩にある。今回発見したのはいちばんポピュラーなおわん型だ。残念ながら、卵は見られなかった。しかし、近くに野鳥の巣があることだけは確かなことだ。過疎地はまさに、安全・安心な場所だということだ。
同じころ、梅雨の時期を狙って、庭で野生化している「シュウカイドウ」をバタフライガーデンの外縁に植え付けることにした。というのも、シュウカイドウは、日陰が好きなようで生命力も抜群だ。それにあった所の外縁に植えるために、チャノキの一部を少しづつ伐っていたところ、突然、広い空間が出てきた。
最近、出没しなくなったとみられた「イノシシ」のねぐらだった。そこだけぽっかり空間があり、姿を隠しやすいように穴も掘られていた。近づいたオラでも全くわからないくらいのサティアンだった。外側のいくつかのチャノキを伐採して初めて発見したのだった。
しかも、その先数メートルにも同じねぐらが隠されていた。ひょっとすると、つがいなのだろうか。ちょうど、イノシシの大きさがすっぽりはまるくらいのねぐらだ。最近は、イノシシ被害はほとんど減速していたので安心していたところだった。シカと比べてイノシシは、被害の規模がチンピラとヤクザとの違いくらいの狼藉を働く。
このねぐらから上の山側に向かって獣道があるようだ。沈着なイノシシはこの拠点から人間の動静を観察していたに違いない。画像左側の下は2~3mの石垣があり、地元が良く使う小さな道路となっている。右側はチャノキを挟んでバタフライガーデンでオラがときどき作業しているところだ。
そんな発見にどきまぎしながらシュウカイドウの植え付けを完了する。ここは裏山の外縁なので1mくらいしか幅がない。慎重に作業していないとすぐ下の道路に落下してしまう。イノシシの寝床のとなりに植えたシュウカイドウはこれから先無事だろうか。安全・安心の寝床をつぶしたのはオラだったが、イノシシが安心して還る場所を確保してあげなければならない。ひるがえって、ガザ地区・ウクライナの国民が安息できるねぐらを確保するのは、世界の・人類の課題でもある。