山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

百田尚樹『永遠の0(ゼロ)』を読む

2013-12-14 18:54:51 | 読書
 ベストセラーを出し続けている百田尚樹(ヒャクタナオキ)の作品に注目していたところ、『永遠のゼロ』の映画の予告編を見たうえに、娘が友達からその文庫本を借りてきた。
 すぐさま横取りして暇をみては読み込む。

 ゼロ戦の飛行兵であった主人公宮部久蔵の死を孫たちが究明していく物語だ。
 作者は詳細なデータを駆使して帝国海軍の体質を次々告発していく。
 同時に主人公の「生きる」固執を通して閉塞された時代をどう生きるべきかを読者に問いかける。

     
 そのため物語は戦記物に終わらず、最後の展開に感動の決定打を打つ。
 オイラも涙をいくどもこらえながら行間に向かう。
 「解説」を書いた俳優児玉清は読み終えて号泣をこらえられなかったほどだ。
 そのくらい人間の清らかさというものを汚毒の世界から磨き上げている作品でもある。

                       
 戦争に踏み込んでしまった大きな原因は、それぞれの立場のメンツ・建て前から付和雷同していく傲慢な体質にあるかと思う。
 「志願兵」ということがじつはそうせざるをえない周囲の雰囲気。
 こうした「空気を読む」陥穽は、現代でもなお引き継がれている。

 つくづく、孤立を恐れずさわやかに生きる生き方をあらたに提示された小説だった。
 マスメディアはこの視点を根底から欠落したまま視聴率競争に明け暮れている。

 ときどき良心的な番組があっても即席のお笑いバラエティーで簡単にかき消されてしまう。
 だからこそ、国民一人ひとりの自立した覚醒が鍵となる。
 そんな静かな願いと怒りを秘めた宮部の生き方。
 それを熟成して書き上げた百田尚樹の作品にこれからも注目していきたい。
                 (講談社文庫・2009.7.)
 

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