郵便物をポストに投函するのをチャンスに路上観察を楽しむことにしている。もちろん、歩いてこその発見がある。田舎の人の多くは歩くより自動車利用のほうが多い。歩くことで春をつかみ、風のそよぎをキャッチし、路上にあふれる自然やモノの奥行きを探検するのだ。
そんなとき、こわそうな顔のタヌキの石像を発見。そこにあるのは知ってはいたが、表情がこんなに強面であるとは見過ごしていた。
タヌキの置物は信楽焼が有名だ。昭和26年に信楽に行幸した天皇を小旗をもつ信楽焼のタヌキが歓迎したということで、天皇も歌を詠むほどに感激し、そこからタヌキの信楽焼が全国に広まっていったという。それ以上に、「八相縁起」があるとして商売繁盛の願掛けとして利用もされていった。タヌキは「他を抜く」=「競争に勝つ」=「儲かる」という意味あいを持つという。
いかにも日本人的な現世利益が気になるが、この狸の置物の「八相縁起」は、①笠ー災害から守る ②目ー気配り・注意力向上向上 ③顔ー顔の広さと笑顔で人間関係つなぐ ④腹ー沈着・くいっぱぐれない ⑤尻尾ー終わりよし ⑥金〇ー金運 ⑦徳利ー人徳が身に着く ⑧大福帳ー信用確保など、があげられる。
ただし、この狸の表情には笑顔がないのはなぜだろうか。むしろ、怒りを表現している。自分に都合よい利益しか考えない人間への怒りだろうか。口当たりのいいことには興味を持つがそれ以上のことには「三猿」になってしまうという日本人批判か、とか、勝手に推測してしまう。そんな想像力を膨らませるモノがそばにあったことで、散歩してみてよかったと思うのだった。