待ちに待っていた映画『ドラゴン・タトゥーの女』が2月10日(金)に公開された。
(ちなみにアメリカは2011年12月20日、スウェーデンは2011年12月21日公開)
なぜ私が「待ちに待っていた」のか?
理由は、三つ。
①映画館で予告編を見ていたから。
②大好きなデヴィッド・フィンチャー監督作品だから。
③原作であるスティーグ・ラーソンの小説が抜群に面白かったから。
①まずは、予告編(←クリック)
ナレーションは一切なく、
ヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oがカバーしたレッド・ツェッペリンのヒット曲「移民の歌」が流れる中、
短いシーンが次々と現れては消える。
この予告編を見ただけで、本編が傑作であることが予見される。
②デヴィッド・フィンチャー監督作品は傑作揃い。
『エイリアン3』(1992年)
『セブン』(1995年)
『ゲーム』(1997年)
『ファイト・クラブ』(1999年)
『パニック・ルーム』(2002年)
『ゾディアック』(2007年)
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)
『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)
これに本作『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)が加わる。
色調を抑えたやや暗い画づくりが特徴で、
どの作品にもフィンチャーの個性が深く刻まれている。
③原作は、スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作。
アメリカでは1730万部。
イギリスでは1100万部。
フランスでは380万部。
本書が生まれた人口900万人のスウェーデンでは360万部。
そして、全世界では、6000万部という売上を記録。(いずれも三部作合計)
ベストセラーだからということではなく(むしろ私はベストセラーはほとんど読まない)、
映画の原作だからということで気軽に読み始めたのだが、
読み進むうちに、この『ミレニアム』三部作に完全にハマってしまった。
スウェーデンの作家の小説なので、
登場人物の名前に馴染みがなく、
しかも登場人物が多く、
読み始めはあまり印象がよくなかった。
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』の上巻の後半あたりから、俄然面白くなってきた。
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』下巻に取り掛かった頃には、
もう寝食を忘れて読み耽っていた。
結局、一日一冊のペースで、
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女 上』379p
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女 下』438p
『ミレニアム2火と戯れる女 上』462p
『ミレニアム2火と戯れる女 下』452p
『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士 上』494p
『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士 下』473p
計2698pを、6日間で読んでしまった。
とにかく面白かった。
こんなに夢中になって読んだのは、本当に久しぶりだった。
この小説には、名うての本読み達がコメントを寄せているが、
故・児玉清さんの
「面白いという言葉を百回繰り返してもまだ足りないほど心を奪われた。これぞ最高のミステリー」
ノーベル賞作家であるマリオ・バルガス=リョサの
「子どもの頃、デュマやディケンズやヴィクトル・ユーゴーの小説に没頭したように、ミレニアム三部作を幸福感と興奮に包まれて読みふけった」
という言葉が、私の心情にもピタリと当てはまり、
これまでこの作品を読まなかった己の不明を恥じたことであった。
簡単に、原作者を紹介しておこう。
【スティーグ・ラーソン】
1954年スウェーデン北部に生まれる。
スウェーデン通信でグラフィック・デザイナーとして20年間働き、英国の反ファシズムの雑誌『サーチライト』の編集に長く携わる。
1995年、人道主義的な政治雑誌『EXPO』を創刊し、やがて編集長を務めた。
日に60本もタバコを吸うヘビースモーカーで、仕事中毒でもあった。
パートナーである女性とともに2002年から『ミレニアム』シリーズの執筆に取りかかり、2004年のはじめに三冊の出版契約を結ぶ。
2005年、第一部『ドラゴン・タトゥーの女』が発売されるや、たちまちベストセラーの第一位になり、
全世界で三部作合計6000万部の売り上げを記録、社会現象を巻き起こした。
しかし、筆者のラーソンは大成功を見ることなく、2004年11月、心筋梗塞で死去した。
享年50。
そう、原作者は、自著のベストセラーを知らずに亡くなったのだ。
この『ミレニアム』シリーズは第5部まで構想が組まれていたそうだが、
スティーグ・ラーソンの死により、もう続編を読むことができない。
それが本当に残念。
さて、映画に移ろう。
公開日の2月10日(金)は仕事だったので、
仕事帰りにレイトショーで見た。
とにかく公開初日に見たかった。
で、どうだったかというと、
予見した通り、素晴らしい作品であった。
まさに、傑作。
上映時間の158分が短く感じられるほど面白かった。
スウェーデンを揺るがせた財界汚職事件の告発記事を書きながらも、名誉棄損で敗訴したミカエル・プロムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、意気消沈の日々を送っていた。
ある日、彼のもとへスウェーデン有数の財閥ヴァンゲルの元会長ヘンリック・ヴァンゲル老人(クリストファー・プラマー)から家族史編纂の依頼が舞い込む。
実はヘンリックの真の目的は40年前に起きた親族の娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。
ヴァンゲルは彼女が一族の誰かに殺害されたと信じていた。
40年前に一族が住む孤島から何の痕跡も残さずに消えた少女。
成功の裏に隠された一族の血塗られた過去に気づいたものの、手掛かりの掴めないミカエルは、一族の弁護士から天才的な資料収集能力の持ち主として、ある人物を紹介される。
リスベット・サランデル(ルーニー・マーラー)という名の、顔色が悪く、拒食症患者のようにガリガリに痩せた女だった。
ほとんどお喋りをしない小柄なリスベットは、肩口から背中にかけて、龍の刺青(ドラゴン・タトゥー)が彫られていて、異彩を放っていた。
意外なことに、彼女はこの事件に異様な関心を示す。
そして彼女は、ハリエットの日記に記された聖書にまつわる数字が、ロシアの国境付近で未解決のままとなっている連続猟奇殺人事件と関連があることを突き止めるのだった……
(ストーリーはパンフレット等を参考に構成)
やはり、なんといっても、リスベット・サランデル役のルーニー・マーラーが素晴らしかった。
このルーニー・マーラー、
デヴィッド・フィンチャー監督の前作品『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)に出ていたのを憶えておられるだろうか?
主人公マーク・ザッカーバーグに別れを告げるガールフレンド(役名エリカ)の役で出ていた。
あの清純な感じのこの女性(ルーニー・マーラー)が、
『ドラゴン・タトゥーの女』では、
ピアスにタトゥー、
大胆なショートカット、
鋭い目つきの女性に変身していてビックリ。
しぐさ、言葉づかい、表情……
どれをとってもリスベット・サランデルに成りきっていて、完璧。
この作品で、アカデミー主演女優賞にノミネートされたのも頷ける。
ミカエル・プロムクヴィスト役のダニエル・クレイグ。
2005年に第6代目のジェームズ・ボンド役への抜擢され、一躍有名に……
だが、それまでのボンドのイメージと違っていた為、
発表直後は不評の噂も飛び交ったが、
『007 カジノ・ロワイヤル』が公開されるや、
ボンド役の先輩であるショーン・コネリーやロジャー・ムーアなどから絶賛され、
『007』の原作愛読者からも、
「彼が演じるジェームズ・ボンドが最も原作に近い」
という声が多くなり、その後も、
『007 慰めの報酬』(2008年)や、
今年(2012年)公開予定の『007 スカイフォール』などで活躍。
昨年公開された『カウボーイ& エイリアン』にも出演。
この『ドラゴン・タトゥーの女』でも敏腕ジャーナリストを好演していた。
アカデミー賞には、主演女優賞の他、
撮影賞、編集賞、音響編集賞、音響録音賞にもノミネートされているが(ノミネートされているから褒めるワケではないのだが)、撮影、編集、音響は、本当に素晴らしかった。
これは、デヴィッド・フィンチャー監督のどの作品にも言えることであり、
デヴィッド・フィンチャー監督作品を見に行く楽しみのひとつでもある。
『ソーシャル・ネットワーク』でもそうであったが、
『ドラゴン・タトゥーの女』でも、
むち打ち症になるくらい、
のっけからグイグイと音と映像で引っ張っていかれるので要注意。(笑)
とにもかくにも映画を見てもらいたい。
そして、原作を読んでもらいたい。
まだ映画を見ていないあなたが、私は羨ましい。
まだ原作を読んでいないあなたが、私は羨ましい。
なぜなら、これから存分に楽しめるのだから……
何も知らないあなたは、
これから、あの蠱惑的な世界に耽溺できるのだから……
(ちなみにアメリカは2011年12月20日、スウェーデンは2011年12月21日公開)
なぜ私が「待ちに待っていた」のか?
理由は、三つ。
①映画館で予告編を見ていたから。
②大好きなデヴィッド・フィンチャー監督作品だから。
③原作であるスティーグ・ラーソンの小説が抜群に面白かったから。
①まずは、予告編(←クリック)
ナレーションは一切なく、
ヤー・ヤー・ヤーズのカレン・Oがカバーしたレッド・ツェッペリンのヒット曲「移民の歌」が流れる中、
短いシーンが次々と現れては消える。
この予告編を見ただけで、本編が傑作であることが予見される。
②デヴィッド・フィンチャー監督作品は傑作揃い。
『エイリアン3』(1992年)
『セブン』(1995年)
『ゲーム』(1997年)
『ファイト・クラブ』(1999年)
『パニック・ルーム』(2002年)
『ゾディアック』(2007年)
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)
『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)
これに本作『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)が加わる。
色調を抑えたやや暗い画づくりが特徴で、
どの作品にもフィンチャーの個性が深く刻まれている。
③原作は、スウェーデンの作家スティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作。
アメリカでは1730万部。
イギリスでは1100万部。
フランスでは380万部。
本書が生まれた人口900万人のスウェーデンでは360万部。
そして、全世界では、6000万部という売上を記録。(いずれも三部作合計)
ベストセラーだからということではなく(むしろ私はベストセラーはほとんど読まない)、
映画の原作だからということで気軽に読み始めたのだが、
読み進むうちに、この『ミレニアム』三部作に完全にハマってしまった。
スウェーデンの作家の小説なので、
登場人物の名前に馴染みがなく、
しかも登場人物が多く、
読み始めはあまり印象がよくなかった。
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』の上巻の後半あたりから、俄然面白くなってきた。
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女』下巻に取り掛かった頃には、
もう寝食を忘れて読み耽っていた。
結局、一日一冊のペースで、
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女 上』379p
『ミレニアム1ドラゴン・タトゥーの女 下』438p
『ミレニアム2火と戯れる女 上』462p
『ミレニアム2火と戯れる女 下』452p
『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士 上』494p
『ミレニアム3眠れる女と狂卓の騎士 下』473p
計2698pを、6日間で読んでしまった。
とにかく面白かった。
こんなに夢中になって読んだのは、本当に久しぶりだった。
この小説には、名うての本読み達がコメントを寄せているが、
故・児玉清さんの
「面白いという言葉を百回繰り返してもまだ足りないほど心を奪われた。これぞ最高のミステリー」
ノーベル賞作家であるマリオ・バルガス=リョサの
「子どもの頃、デュマやディケンズやヴィクトル・ユーゴーの小説に没頭したように、ミレニアム三部作を幸福感と興奮に包まれて読みふけった」
という言葉が、私の心情にもピタリと当てはまり、
これまでこの作品を読まなかった己の不明を恥じたことであった。
簡単に、原作者を紹介しておこう。
【スティーグ・ラーソン】
1954年スウェーデン北部に生まれる。
スウェーデン通信でグラフィック・デザイナーとして20年間働き、英国の反ファシズムの雑誌『サーチライト』の編集に長く携わる。
1995年、人道主義的な政治雑誌『EXPO』を創刊し、やがて編集長を務めた。
日に60本もタバコを吸うヘビースモーカーで、仕事中毒でもあった。
パートナーである女性とともに2002年から『ミレニアム』シリーズの執筆に取りかかり、2004年のはじめに三冊の出版契約を結ぶ。
2005年、第一部『ドラゴン・タトゥーの女』が発売されるや、たちまちベストセラーの第一位になり、
全世界で三部作合計6000万部の売り上げを記録、社会現象を巻き起こした。
しかし、筆者のラーソンは大成功を見ることなく、2004年11月、心筋梗塞で死去した。
享年50。
そう、原作者は、自著のベストセラーを知らずに亡くなったのだ。
この『ミレニアム』シリーズは第5部まで構想が組まれていたそうだが、
スティーグ・ラーソンの死により、もう続編を読むことができない。
それが本当に残念。
さて、映画に移ろう。
公開日の2月10日(金)は仕事だったので、
仕事帰りにレイトショーで見た。
とにかく公開初日に見たかった。
で、どうだったかというと、
予見した通り、素晴らしい作品であった。
まさに、傑作。
上映時間の158分が短く感じられるほど面白かった。
スウェーデンを揺るがせた財界汚職事件の告発記事を書きながらも、名誉棄損で敗訴したミカエル・プロムクヴィスト(ダニエル・クレイグ)は、意気消沈の日々を送っていた。
ある日、彼のもとへスウェーデン有数の財閥ヴァンゲルの元会長ヘンリック・ヴァンゲル老人(クリストファー・プラマー)から家族史編纂の依頼が舞い込む。
実はヘンリックの真の目的は40年前に起きた親族の娘ハリエット失踪事件の真相究明だった。
ヴァンゲルは彼女が一族の誰かに殺害されたと信じていた。
40年前に一族が住む孤島から何の痕跡も残さずに消えた少女。
成功の裏に隠された一族の血塗られた過去に気づいたものの、手掛かりの掴めないミカエルは、一族の弁護士から天才的な資料収集能力の持ち主として、ある人物を紹介される。
リスベット・サランデル(ルーニー・マーラー)という名の、顔色が悪く、拒食症患者のようにガリガリに痩せた女だった。
ほとんどお喋りをしない小柄なリスベットは、肩口から背中にかけて、龍の刺青(ドラゴン・タトゥー)が彫られていて、異彩を放っていた。
意外なことに、彼女はこの事件に異様な関心を示す。
そして彼女は、ハリエットの日記に記された聖書にまつわる数字が、ロシアの国境付近で未解決のままとなっている連続猟奇殺人事件と関連があることを突き止めるのだった……
(ストーリーはパンフレット等を参考に構成)
やはり、なんといっても、リスベット・サランデル役のルーニー・マーラーが素晴らしかった。
このルーニー・マーラー、
デヴィッド・フィンチャー監督の前作品『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)に出ていたのを憶えておられるだろうか?
主人公マーク・ザッカーバーグに別れを告げるガールフレンド(役名エリカ)の役で出ていた。
あの清純な感じのこの女性(ルーニー・マーラー)が、
『ドラゴン・タトゥーの女』では、
ピアスにタトゥー、
大胆なショートカット、
鋭い目つきの女性に変身していてビックリ。
しぐさ、言葉づかい、表情……
どれをとってもリスベット・サランデルに成りきっていて、完璧。
この作品で、アカデミー主演女優賞にノミネートされたのも頷ける。
ミカエル・プロムクヴィスト役のダニエル・クレイグ。
2005年に第6代目のジェームズ・ボンド役への抜擢され、一躍有名に……
だが、それまでのボンドのイメージと違っていた為、
発表直後は不評の噂も飛び交ったが、
『007 カジノ・ロワイヤル』が公開されるや、
ボンド役の先輩であるショーン・コネリーやロジャー・ムーアなどから絶賛され、
『007』の原作愛読者からも、
「彼が演じるジェームズ・ボンドが最も原作に近い」
という声が多くなり、その後も、
『007 慰めの報酬』(2008年)や、
今年(2012年)公開予定の『007 スカイフォール』などで活躍。
昨年公開された『カウボーイ& エイリアン』にも出演。
この『ドラゴン・タトゥーの女』でも敏腕ジャーナリストを好演していた。
アカデミー賞には、主演女優賞の他、
撮影賞、編集賞、音響編集賞、音響録音賞にもノミネートされているが(ノミネートされているから褒めるワケではないのだが)、撮影、編集、音響は、本当に素晴らしかった。
これは、デヴィッド・フィンチャー監督のどの作品にも言えることであり、
デヴィッド・フィンチャー監督作品を見に行く楽しみのひとつでもある。
『ソーシャル・ネットワーク』でもそうであったが、
『ドラゴン・タトゥーの女』でも、
むち打ち症になるくらい、
のっけからグイグイと音と映像で引っ張っていかれるので要注意。(笑)
とにもかくにも映画を見てもらいたい。
そして、原作を読んでもらいたい。
まだ映画を見ていないあなたが、私は羨ましい。
まだ原作を読んでいないあなたが、私は羨ましい。
なぜなら、これから存分に楽しめるのだから……
何も知らないあなたは、
これから、あの蠱惑的な世界に耽溺できるのだから……