「佐賀県で一番好きな山は?」
とか、
「九州で一番好きな山は?」
とか訊かれたら、大いに迷うところだけど、
「日本で一番好きな山は?」
と訊かれたら、
たぶん迷わず即答するだろう。
「剱岳」と。
剱岳に登ったのは、もう4年前のことになる。
会社から4日間の連休をもらい、
初日は、佐賀から室堂まで。
2日目は、立山三山を縦走し、剣山荘まで。
3日目は、剱岳登頂後、大日三山を経て、大日小屋まで。
4日目は、大日小屋から大日平、称名滝を経て、佐賀まで。
佐賀からの往復の時間を含めた4日間で、
立山三山、剱岳、大日三山を楽しめた思い出は、
今も私の胸の奥に宝物としてある。
この4年前の縦走時、
いろんな角度から剱岳を眺めたが、
その存在感に圧倒された。
ことに、別山から剱岳を見たときは、感動で躰が震えた。
その瞬間、剱岳が私の中で「一番」の山になった。
剱岳に登頂時は、
その喜びに有頂天になっていたが、
冷静になって考えてみると、
小屋から剱岳山頂までのピストンで、
歩行時間は休憩時間を除くと4時間ほどしか要していない。
剱澤小屋の標高が2400mで、
剣山荘の標高が2470mだから、
剱岳山頂までの標高差は僅かしかなく、
難所が多いとはいえ、たかだか500m~600mを登るだけなのだ。
これで、はたして、剱岳へ登ったと言えるのか?
いつしか、剱岳へも、
「海抜0メートルから登れないだろうか……」
と考えるようになっていた。
ネットで検索してみると、
海抜0メートルから剱岳へ登った人は、それほど多くなく、
しかも、ほとんどが、海抜0メートルから馬場島へは自転車を使っていた。
普通の登山者が、
普通に歩いて、
海抜0メートルから剱岳山頂まで登った例はほとんどなかった。
「これはやってみる価値があるのではないか……」
と思った。
いや、価値があるとかないとかより、
私自身が、海抜0メートルから剱岳に登ることを熱望するようになっていた。
そして、今夏、ついに実行に移すことにした。
どこを出発点にするか大いに悩んだが、
地図などで検討した結果、
滑川市にある「道の駅ウェーブパークなめりかわ」近くの海岸に決めた。
第1日目は、ここから馬場島までの約30kmを歩く。
第2日目は、馬場島から一気に剱岳山頂を目指す。
普通は、早月小屋に泊まって、
その翌日に山頂までのピストンというのが一般的だが、
馬場島から早月小屋までのコースタイムが、
『山と高原地図』によると、5時間40分と中途半端。
それよりも、馬場島から一気に剱岳山頂まで登って、
別山尾根ルートを下って剱澤小屋まで行こうと思った。
ただ、馬場島から剱岳山頂までのコースタイムが9時間10分かかる上に、
疲れのピークのときに、
別山尾根の「カニのよこばい」などの難所をさらに2時間25分も歩かなければならない。
それに、早月小屋や、剱澤小屋・剣山荘などからピストンする場合は、
ザックを小屋にデポして、サブザックなど空身に近いかたちで登れるが、
早月尾根から別山尾根へ越えるとなると、
全装備を背負って難所を歩かなければならない。
重いザックを背負って、計11時間35分の歩行はけっこう大変だ。
そこで、ザックは、いつものカカポくんではなく、
25リットルの軽量ザックにすることにした。
用意したのは、モンベルの「フラットアイアンパック 25」。
このザック、重量は560gしかない。
このザックに入るだけのものを持って行こうと決めた。
ザックと共に、登山靴も軽いものにした。
初日に舗装道路を約30km歩くので、
重い登山靴では足がツライ。
馬場島から先は険しい山歩きになるので、
あまり軟弱な靴では駄目だが、
ある程度の条件を満たしていれば、
ハイキング用の靴でもイイのではないかと考えた。
そこで用意したのが、
メレルの「モアブミッド ゴアテックス」。
27cmで重さ490g(片方)しかない。
いつも履いている登山靴より300gほども軽い。
8月4日(月)
富山県滑川市。
夜明け前の海岸に佇む、
老いさらばえ、足腰の弱りつつある男ひとり。(笑)
登山靴を海水に浸ける。
4:41
出発。
町はまだ眠っている。
車も通らない。
滑川駅前を通過。
駅横にある地下道を通って、駅の反対側へ出た。
空が明るくなってきた。
5:05
コンビニで、エネルギージェルとパンを購入。
結局、この店が、最初で最後のコンビニであった。(笑)
5:15
太陽が見えた。
国道8号線と、
北陸自動車道の下を抜ける。
段々、人家が少なくなってきた。
軽快に歩いて行く。
6:35
入会橋を渡る。
橋の上から見た風景。
早月川沿いにある養豚場を抜けて行く。
7:03
対岸に蓑輪温泉が見えた。
7:08
ほうりゅう橋を渡る。
この辺りの早月川の水が美しい。
「歩き人」だけが見ることのできる風景。
人家がまったくなくなった。
こういうあまり人が通らない道を歩いていて、
恐いのは熊。
看板もいくつか見かけた。
私の熊対策グッズといえば、
ヤスさんからもらった「くまモンの熊鈴」と、
100円ショップで買ったホイッスル。(笑)
カーブの向う側に熊がいるかもしれないので、
カーブの手前などで、よくホイッスルを吹いた。
舗装されていない道もあったが、
そんな場所は工事現場が多く、
人がいるだけでホッとした。
この辺りからは、虫たちがまとわりつき始めた。
さっそく悟空さんから戴いた虫除けバンダナを首に巻く。
8:16
「馬場島まで12km」の道標を通過。
あと3時間ほどか?
白萩東部公民館前を通過。
内山康弘「剱」写真展が開催中であったが、
開館時刻前だったので、鑑賞は叶わなかった。
※内山康弘氏のネットのギャラリーはコチラから。
8:30
自動販売機を発見。
人家がなくなってまったく自動販売機がなかったが、
剱橋の手前でやっと発見。
嬉しくて、オレンジジュースを購入。
パンを食べながら飲む。
8:33
剱橋を渡る。
橋の上からの風景。
剱橋を渡り終えて歩いていると、
キツリフネを見つけた。
嬉しい。
8:57
伊折橋を通過。
この橋から見える風景が素晴らしかった。
遠くは雲がかかって見えないが、
晴れていれば剱岳が見えるビューポイント。
橋を歩いている間にも風景が変化していく。
9:01
「馬場島まで8km」の道標を通過。
9:06
赤谷橋を通過。
次第に道の傾斜がきつくなってくるが、
道の両側にタマアジサイが咲いていて、
疲れを癒してくれる。
9:41
「馬場島まで6km」の道標を通過。
9:46
冬期には閉鎖となるゲートを通過。
冬山のときは、ここから歩くのだそうだ。
このゲートを過ぎた辺りから、
風景が山岳美の様相を呈してくる。
雲で剱岳山頂は見えないが、
三ノ窓、小窓など、北にのびる急峻な岩稜が見える。
道沿いの花も美しい。
いよいよ剱岳の懐に入っていく感じがしてきた。
足取りも軽くなってきた。
「馬場島まで3km」の道標を通過。
10:34
白萩発電所前を通過。
写真は、通過後に振り返って撮ったもの。
馬場島が近くなってきた。
ワクワクするような風景だ。
歩いた者だけが得られる満足感。
ついに最後まで剱岳は私に心を許してくれず、
今日は姿を見せてくれなかったが、
馬場島まで歩けたことで、
そして、より剱岳に近づけたことで、
私は歓びに浸っていた。
岩に生える「座禅桜」を右手に見ながら、最後の坂を登る。
11:05
馬場島荘に到着。
滑川から6時間24分で馬場島まで歩くことができた。
早く着いたので、
周辺を散策。
明日は、午前3時出発を予定しているので、
登山口周辺を確認しておきたいと思った。
「劔岳の諭」。
そして、「試練と憧れ」。
「憧れ」だけでやってきた私は、
明日、「試練」を与えられるとも知らず、
呑気に記念写真。
馬場島荘に戻り、
風呂に入り、
昼食にカレーライスを食べ、昼寝をした。
そして、夜には品数の多い美味しい夕食を頂いた。
明日は、早月尾根を剱岳山頂まで一気に登り、
別山尾根を下って、剱澤小屋まで行く予定。
コースタイムで11時間35分の長丁場。
出発は午前3時。
早めに寝て、明日に備えることにした。
明日はどんな一日が待っているのか……
とか、
「九州で一番好きな山は?」
とか訊かれたら、大いに迷うところだけど、
「日本で一番好きな山は?」
と訊かれたら、
たぶん迷わず即答するだろう。
「剱岳」と。
剱岳に登ったのは、もう4年前のことになる。
会社から4日間の連休をもらい、
初日は、佐賀から室堂まで。
2日目は、立山三山を縦走し、剣山荘まで。
3日目は、剱岳登頂後、大日三山を経て、大日小屋まで。
4日目は、大日小屋から大日平、称名滝を経て、佐賀まで。
佐賀からの往復の時間を含めた4日間で、
立山三山、剱岳、大日三山を楽しめた思い出は、
今も私の胸の奥に宝物としてある。
この4年前の縦走時、
いろんな角度から剱岳を眺めたが、
その存在感に圧倒された。
ことに、別山から剱岳を見たときは、感動で躰が震えた。
その瞬間、剱岳が私の中で「一番」の山になった。
剱岳に登頂時は、
その喜びに有頂天になっていたが、
冷静になって考えてみると、
小屋から剱岳山頂までのピストンで、
歩行時間は休憩時間を除くと4時間ほどしか要していない。
剱澤小屋の標高が2400mで、
剣山荘の標高が2470mだから、
剱岳山頂までの標高差は僅かしかなく、
難所が多いとはいえ、たかだか500m~600mを登るだけなのだ。
これで、はたして、剱岳へ登ったと言えるのか?
いつしか、剱岳へも、
「海抜0メートルから登れないだろうか……」
と考えるようになっていた。
ネットで検索してみると、
海抜0メートルから剱岳へ登った人は、それほど多くなく、
しかも、ほとんどが、海抜0メートルから馬場島へは自転車を使っていた。
普通の登山者が、
普通に歩いて、
海抜0メートルから剱岳山頂まで登った例はほとんどなかった。
「これはやってみる価値があるのではないか……」
と思った。
いや、価値があるとかないとかより、
私自身が、海抜0メートルから剱岳に登ることを熱望するようになっていた。
そして、今夏、ついに実行に移すことにした。
どこを出発点にするか大いに悩んだが、
地図などで検討した結果、
滑川市にある「道の駅ウェーブパークなめりかわ」近くの海岸に決めた。
第1日目は、ここから馬場島までの約30kmを歩く。
第2日目は、馬場島から一気に剱岳山頂を目指す。
普通は、早月小屋に泊まって、
その翌日に山頂までのピストンというのが一般的だが、
馬場島から早月小屋までのコースタイムが、
『山と高原地図』によると、5時間40分と中途半端。
それよりも、馬場島から一気に剱岳山頂まで登って、
別山尾根ルートを下って剱澤小屋まで行こうと思った。
ただ、馬場島から剱岳山頂までのコースタイムが9時間10分かかる上に、
疲れのピークのときに、
別山尾根の「カニのよこばい」などの難所をさらに2時間25分も歩かなければならない。
それに、早月小屋や、剱澤小屋・剣山荘などからピストンする場合は、
ザックを小屋にデポして、サブザックなど空身に近いかたちで登れるが、
早月尾根から別山尾根へ越えるとなると、
全装備を背負って難所を歩かなければならない。
重いザックを背負って、計11時間35分の歩行はけっこう大変だ。
そこで、ザックは、いつものカカポくんではなく、
25リットルの軽量ザックにすることにした。
用意したのは、モンベルの「フラットアイアンパック 25」。
このザック、重量は560gしかない。
このザックに入るだけのものを持って行こうと決めた。
ザックと共に、登山靴も軽いものにした。
初日に舗装道路を約30km歩くので、
重い登山靴では足がツライ。
馬場島から先は険しい山歩きになるので、
あまり軟弱な靴では駄目だが、
ある程度の条件を満たしていれば、
ハイキング用の靴でもイイのではないかと考えた。
そこで用意したのが、
メレルの「モアブミッド ゴアテックス」。
27cmで重さ490g(片方)しかない。
いつも履いている登山靴より300gほども軽い。
8月4日(月)
富山県滑川市。
夜明け前の海岸に佇む、
老いさらばえ、足腰の弱りつつある男ひとり。(笑)
登山靴を海水に浸ける。
4:41
出発。
町はまだ眠っている。
車も通らない。
滑川駅前を通過。
駅横にある地下道を通って、駅の反対側へ出た。
空が明るくなってきた。
5:05
コンビニで、エネルギージェルとパンを購入。
結局、この店が、最初で最後のコンビニであった。(笑)
5:15
太陽が見えた。
国道8号線と、
北陸自動車道の下を抜ける。
段々、人家が少なくなってきた。
軽快に歩いて行く。
6:35
入会橋を渡る。
橋の上から見た風景。
早月川沿いにある養豚場を抜けて行く。
7:03
対岸に蓑輪温泉が見えた。
7:08
ほうりゅう橋を渡る。
この辺りの早月川の水が美しい。
「歩き人」だけが見ることのできる風景。
人家がまったくなくなった。
こういうあまり人が通らない道を歩いていて、
恐いのは熊。
看板もいくつか見かけた。
私の熊対策グッズといえば、
ヤスさんからもらった「くまモンの熊鈴」と、
100円ショップで買ったホイッスル。(笑)
カーブの向う側に熊がいるかもしれないので、
カーブの手前などで、よくホイッスルを吹いた。
舗装されていない道もあったが、
そんな場所は工事現場が多く、
人がいるだけでホッとした。
この辺りからは、虫たちがまとわりつき始めた。
さっそく悟空さんから戴いた虫除けバンダナを首に巻く。
8:16
「馬場島まで12km」の道標を通過。
あと3時間ほどか?
白萩東部公民館前を通過。
内山康弘「剱」写真展が開催中であったが、
開館時刻前だったので、鑑賞は叶わなかった。
※内山康弘氏のネットのギャラリーはコチラから。
8:30
自動販売機を発見。
人家がなくなってまったく自動販売機がなかったが、
剱橋の手前でやっと発見。
嬉しくて、オレンジジュースを購入。
パンを食べながら飲む。
8:33
剱橋を渡る。
橋の上からの風景。
剱橋を渡り終えて歩いていると、
キツリフネを見つけた。
嬉しい。
8:57
伊折橋を通過。
この橋から見える風景が素晴らしかった。
遠くは雲がかかって見えないが、
晴れていれば剱岳が見えるビューポイント。
橋を歩いている間にも風景が変化していく。
9:01
「馬場島まで8km」の道標を通過。
9:06
赤谷橋を通過。
次第に道の傾斜がきつくなってくるが、
道の両側にタマアジサイが咲いていて、
疲れを癒してくれる。
9:41
「馬場島まで6km」の道標を通過。
9:46
冬期には閉鎖となるゲートを通過。
冬山のときは、ここから歩くのだそうだ。
このゲートを過ぎた辺りから、
風景が山岳美の様相を呈してくる。
雲で剱岳山頂は見えないが、
三ノ窓、小窓など、北にのびる急峻な岩稜が見える。
道沿いの花も美しい。
いよいよ剱岳の懐に入っていく感じがしてきた。
足取りも軽くなってきた。
「馬場島まで3km」の道標を通過。
10:34
白萩発電所前を通過。
写真は、通過後に振り返って撮ったもの。
馬場島が近くなってきた。
ワクワクするような風景だ。
歩いた者だけが得られる満足感。
ついに最後まで剱岳は私に心を許してくれず、
今日は姿を見せてくれなかったが、
馬場島まで歩けたことで、
そして、より剱岳に近づけたことで、
私は歓びに浸っていた。
岩に生える「座禅桜」を右手に見ながら、最後の坂を登る。
11:05
馬場島荘に到着。
滑川から6時間24分で馬場島まで歩くことができた。
早く着いたので、
周辺を散策。
明日は、午前3時出発を予定しているので、
登山口周辺を確認しておきたいと思った。
「劔岳の諭」。
そして、「試練と憧れ」。
「憧れ」だけでやってきた私は、
明日、「試練」を与えられるとも知らず、
呑気に記念写真。
馬場島荘に戻り、
風呂に入り、
昼食にカレーライスを食べ、昼寝をした。
そして、夜には品数の多い美味しい夕食を頂いた。
明日は、早月尾根を剱岳山頂まで一気に登り、
別山尾根を下って、剱澤小屋まで行く予定。
コースタイムで11時間35分の長丁場。
出発は午前3時。
早めに寝て、明日に備えることにした。
明日はどんな一日が待っているのか……